《 特別企画 》リップル〜想定外防災のシナリオ・プラニング

テロ・原発管理から「地球防災」まで
想定外の起こり方への想定・想像力

「厳格な警備業務を行い難い風土」と指弾されたわが国の原発リスク管理
――その克服に向けて

●「厳格な警備業務を行い難い風土」に加え、わが国の「後追い災害対策」が課題

 去る3月23日、NHK総合テレビで「リップル~もしも○○が起きるとしたら?~▽小惑星衝突? 一体何を備えたらいいの?」という番組があった。「もしも小惑星が衝突するとしたら?」……そんな想定外をあえて想定し、どんなことが起きるのか、どんな備えが必要か、想像力をふくらませて思考実験するという趣旨の番組だが、シリーズタイトルらしき「リップル」の意味の説明がなく、いろいろ調べた結果、英語の「RIPPLE=さざ波が立つ」らしい。番組紹介や番組内で「リップル」の説明がないというのは初めての視聴者への想像力に欠けていると言いたいところだが、趣旨は興味深いのでよしとしよう。

 番組の「もしも対策委員会」が今回テーマに選んだのは「小惑星が日本に衝突するとしたら」。コロナ禍が突然生じたように、まさに現代は「不確実な時代」。そこで、想定外に思えることを想定してあらかじめ備えを考える試みが、企業や国家レベルで始まっている。ちなみにドイツでは9年前に「2012年防災計画のためのリスク分析報告」が公表され、未知のウイルス感染症による最悪想定(対策シミュレーション)が行われている。

 そこで「リップル」は、そうした実践手法を活用し、思考実験をしてみようというもの。ゲストタレントを中心に想像力をふくらませて議論は展開する。結論的に言えば、想定される南海トラフ巨大地震や首都直下地震の最悪想定と共通する心構えや備えが議論された。ただ、小惑星の衝突を考える場合、その○○○倍の最悪想定も必要なはずだが……この番組ではそこまでの“最悪想定”はなされなかった。

 ちなみに「リップル」のファシリテーターを務めたのはグリーンフィールドコンサルティング社の西村行功氏で、起こり得る複数の未来を「シナリオ・プランニング」という思考法でシミュレートすることを提案、その思考法を「シナリオ・プランニング」と名づけて商標としている。ただ、「シナリオ・プランニング」は本紙も想定していた“普通名詞”であることから、西村氏に敬意を表しつつ、本紙の一般用語として用いることとする。

>>グリーンフィールドコンサルティング

●小惑星衝突は”想定外”ではない――国連承認の国際会議でそのリスクと「地球防災」を研究

 米国では23年前の1998年にたまたま同時公開された2本の大作映画「アルマゲドン」、「ディープインパクト」で、ディザスター映画ではあるが小惑星衝突想定はなされている。科学的な検証には飛躍はあるものの、その危機管理シミュレーションや人びとの行動変容のあり方・シミュレーションには学ぶべきことも多いのだ。いっぽうわが国では「日本沈没」という大きな危機管理上の想定があり、原作者の小松左京は、感染症テーマでも大作「復活の日」を著していて再評価されているところだ。
 本紙はほぼ2年前の2019年5月15日号(No. 210)で、「プラネタリー・ディフェンス・カンファレンス」(PDC:Planetary Defense Conference/惑星(地球)防衛会議)と呼ばれる国際会議が米国ワシントンDCで開催されたのを機に、「地球防災」というコンセプトを打ち出している。

>>《Bosai Plus》2019年5月15日号(No. 210):自然災害の最悪想定「地球防災」

1998年米国制作映画「アルマゲドン」(IMDbより)。小惑星が地球大接近、激突軌道にあって地球壊滅の危機を招くというストーリー展開
PDC 2019(Planetary Defense Conference 2019/惑星(地球)防衛会議)資料より「小惑星衝突模擬コース」のイメージ図。小惑星が地球に衝突すると地球的規模での大災害が起こり得る

 同会議は、2021年はオーストリア・ウィーンで来たる4月26日~30日に開催されるが、そのホームページには開催日までのカウントダウンが掲載されるなど、”想像力をかき立てる”ものだ。

>>IAA PLANETARY DEFENSE CONFERENCE 2021, Vienna, Austria

「IAA PDC 2021」はオーストリア・ウィーンで来たる4月26日~30日に開催される。小惑星や彗星のような太陽系小天体の地球衝突問題がテーマの国際会議で、そのホームページに開催日までのカウントダウンが掲載され”臨戦感”を演出している。ちなみに、IAA(International Academy of Astronautics=国際宇宙航行アカデミー)は、宇宙関連の研究者から構成される国際アカデミーで国連が非政府組織として承認
2019年11月、海洋研究開発機構(JAMSTEC)や東京大学、神戸大学などの合同調査団が、北西太平洋南鳥島沖の深海堆積物から、中新世天体衝突イベント由来のエジェクタ層(放出物質の堆積層)を発見したことを公表。約1100万年前と推定され、約251万年前に南太平洋に衝突したEltanin天体衝突イベントに次ぐ、世界で2例目の海洋天体衝突イベントの発見である可能性が高いとされている

●事前防災を理念とする「防災省」創設で、旧弊・思考停止打破を

 わが国の災害対策は“後追い、弥縫策”との批判が永くある。災害が起こってから対策を講じるという前例・先例方式である。阪神・淡路大震災や東日本大震災以降は、災害対策、防災の考え方に大きな変更がなされ、先読みとも言うべき「事前防災」や「最悪想定」を災害対策の前提に置くようになってきた。
 しかしそれでも、省庁の縦割りやことなかれ主義、そして先の東電柏崎刈羽原発のテロ対策の失態で見られたような「厳格な警備業務を行い難い風土」の亜種(同調圧力など)が依然として跋扈(ばっこ)する。

 そこで、「防災省」の創設への待望論となる。防災省創設について、“事情通”の有識者は「省庁の既得権は崩せない」と断言するが、まさにそうした思考停止に陥ることこそが、「安全重要度評価の赤(下記囲み記事参照)」であり、事前防災の理念・実践の放棄ではないのか。

外務省は3月23日、「ゴルゴ13の中堅・中小企業向け海外安全対策マニュアル」増補版を作成・公表した。増補版では、既存のマニュアルに、新型コロナウイルス感染症の世界的な流行下でもテロのリスクは軽減しておらず、感染症とテロといった複合的なリスクに適切に対処する必要性があることを伝える新たなエピソードと解説が加えられている(上画像は外務省HP掲載の紹介動画。(C)さいとう・たかを)。新エピソードは、コロナ治療薬の情報を収集するため架空の国へ出張した技術者が現地でテロに巻き込まれそうになるストーリーとなっている

 直近のニュースに、外務省が「中堅・中小企業向け海外安全対策マニュアル」増補版にルゴ13」を起用というものがあった(P.1タイトルカット参照)。コミックで危機管理を説くことにも実効性があればよし、である。21世紀の事前防災は、20世紀型防災の打破から始まる。

>>外務省:「ゴルゴ13の中堅・中小企業向け海外安全対策マニュアル」増補版の発表

〈2021. 04. 01. by Bosai Plus

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