線状降水帯の「危機確認」、「キキクル」で「危機避難」

発達した積乱雲が帯状に連なる線状降水帯の発生で
「顕著な大雨に関する情報」⇒「キキクル」

【 線状降水帯の発生で、「顕著な大雨に関する情報」発表 】

●防災気象情報を巡る“試行錯誤”、あるいは“伝え方の改善”努力

 防災気象情報について、情報が多すぎてわかりにくいという声が高まっていたが、4月28日の参院本会議で、災害時に市町村長が発令する避難勧告を廃止し、避難指示に一本化することを盛り込んだ改正災害対策基本法などが全会一致で可決、成立した。住民への呼びかけを分かりやすくして逃げ遅れによる被災を防ぐ趣旨で、高齢者らの避難を迅速に促す。
 改正法では、大雨時に住民が取るべき行動を示す5段階の警戒レベルについて、上から2番目のレベル4に位置づけていた指示と勧告を、指示に統一する。指示、勧告の見直しは1961年の基本法制定以来初めてとなる。また、個別の避難計画作成を市町村の努力義務にすることも定めた。公布後、1カ月以内に施行、本年の出水期の災害対策に間に合わせる。

 ちなみに気象庁は同28日に、防災気象情報がわかりにくいとの声を受けて設置した「防災気象情報の伝え方に関する検討会」における検討結果を公表、防災気象情報の伝え方の改善策と推進すべき取組みについてとりまとめている。
 2020年度出水期の課題等について「防災気象情報の伝え方に関する検討会」における検討結果を踏まえ、防災気象情報の伝え方の改善策と推進すべき取組みについてとりまとめたものだ。

>>気象庁:防災気象情報の伝え方の改善策と推進すべき取組について

「顕著な大雨に関する情報」の発表タイミングの事例「2020年7月豪雨での熊本県球磨村の例(複数回発表されるケース)」(気象庁資料より)
「顕著な大雨に関する情報」の発表タイミングの事例「2020年7月豪雨での熊本県球磨村の例(複数回発表されるケース)」(気象庁資料より)
「顕著な大雨に関する情報」の発表タイミングの事例「2020年6月27日大雨での佐賀県武雄市の例(1回だけ発表されるケース)」(気象庁資料より)
「顕著な大雨に関する情報」の発表タイミングの事例「2020年6月27日大雨での佐賀県武雄市の例(1回だけ発表されるケース)」(気象庁資料より)

 いっぽう気象庁は今夏から、「線状降水帯」について、九州で発生予測を始める予定だ。線状降水帯による豪雨の危険性が高まった場合には事前に発表する方針で、危険性を少しでも早く伝えて避難時間の確保につなげたい考え。この予測精度を高めるため、今年の梅雨時期から観測船を東シナ海に派遣して観測態勢を拡充するという。気象庁は2022年から、線状降水帯を含む大雨が予想される地域に予測情報を出す計画だが、今夏からの予測はこれとは異なり、データが取れ、精度に問題がないと確認できた範囲での限定的なものとなる見通しだ。

 線状降水帯とは、次々と発生する発達した雨雲(積乱雲)が列をなし、組織化した積乱雲群によって、数時間にわたってほぼ同じ場所を通過または停滞することでつくり出される線状に伸びる強い降水をともなう雨域を言い、長さ50~300km程度、幅20~50km程度に及ぶものとされている(予報用語における「線状降水帯」の定義)。
 昨夏の熊本豪雨など、近年の大雨災害でたびたび発生していることから、メディアなどでも頻繁に用いられ、気象庁はこの用語が一般にも浸透してきたと判断し、線状降水帯に関する情報の位置づけ・役割と情報イメージを次のように要約している。

▼位置づけ:線状降水帯と考えられる雨域が確認され、かつ土砂災害や洪水災害の危険度が急激に高まってきた場合(警戒レベル4相当以上)に緊急的に発表する解説情報
▼役割:大雨による災害発生の危険度が急激に高まっていることを認識してもらうとともに、浸水想定区域や土砂災害警戒区域など、災害リスクが認められている場所にいる住民に対して、市町村から発令されている避難情報や危険度分布、河川の水位情報等の確認を促す

 気象庁は今後、海上の水蒸気量を広範囲、高精度で測れる気象衛星を開発し、スーパーコンピューター「富岳」や人工知能(AI)も活用して、30年には全国を対象に半日前までの線状降水帯発生予測をめざしているという。
 そこで、線状降水帯が発生し、土砂災害や洪水の危険度が急激に高まってきた場合に緊急的に発表される情報、「顕著な大雨に関する情報」が新たに登場する。

●「顕著な大雨に関する情報」、「危険度分布=愛称・キキクル」も登場

 「顕著な大雨に関する気象情報」とは、線状降水帯が確認できて大雨の危険度が急激に高まっていることを知らせる情報で、特別警報が出る前の迅速な避難行動につなげるための情報だ。ただし、線状降水帯に関する情報の発表条件に満たなくとも、広範囲で激しい雨が長時間継続するような場合には、大雨特別警報が発表されたり、甚大な被害が発生し得ることに留意が必要である。

 つまり、「顕著な大雨に関する気象情報」は、線状降水帯発生の予測ではなく、すでに線状降水帯の発生を確認したときに発表される情報であり、いわば、“緊急地震速報の大雨版”と言えるのかもしれない。もちろん、緊急地震速報は数秒・数十秒後の揺れの発生予測だが、「顕著な大雨に関する気象情報」は、すでに発生した線状降水帯による甚大な災害がすでに起こっている可能性を知らせる、あるいは情報の受け手のエリアにこれから起こり得る甚大な災害への警戒を促す情報だと言える。

 気象庁は数年前から、雨による災害の危険度を5段階で色分けして地図上にリアルタイム表示する「危険度分布」をホームページ上で公表している(危険度が高い順に、濃い紫色/うす紫色/赤色/黄色/無色で色分け)。「危険度分布」には、「大雨警報(土砂災害)」、「大雨警報(浸水害)」、「洪水警報」のそれぞれがある。

 気象庁は「危険度分布」の愛称を一般募集し、本年3月、愛称を「キキクル」に決定した。この愛称は「危機が来る」がもとになっており、選考では、危険が迫っていることがわかりやすい、文字数が少なく視認性に優れる、などが評価された。より多くの国民に「危険度分布」を知ってもらい、いざというときの自主的な避難の判断に活用されることを期待している。なお、「キキクル」は、災害ごとに、土砂キキクル、浸水キキクル、洪水キキクルと呼ばれている。

>>気象庁:線状降水帯に関する情報について

>>気象庁:「危険度分布」の愛称を「キキクル」に決定

>>気象庁:「キキクル(危険度分布)」

〈2021. 05. 01. by Bosai Plus〉


▼《Bosai Plus》 No. 257/2021年05月01日号より(同P. 1(「もくじ」付き)へリンク

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