防災テック:地下3次元地図 & 衛星防災・被害予測

「地質・地盤」分析で都市の地震防災やインフラ整備に貢献
+衛星防災情報プラットフォームを構築

【 今後も首都圏主要部の3次元地下地質情報を整備予定 】

●東京下町の低地に沖積層、山の手の武蔵野台地の一部にも軟弱な地層

 国立研究開発法人産業技術総合研究所(以下「産総研」)地質情報研究部門の研究グループ(中澤 努・研究グループ長)が、東京都心部の地下数十メートルまでの地質構造を3次元で立体的に見ることができる次世代地質図「3次元地質地盤図~東京23区版~」を完成させ、去る5月21日から、ウェブ上で公開している。

産総研:都市域の地質地盤図『東京都区部』

 従来の平面の地質図では都市部の地下の地質構造を的確に表現することはむずかしかったが、今回、5万地点に及ぶ大量の調査データを独自に開発した3次元モデリング技術で解析することで、東京都心部の詳細な地下地質構造を立体的に可視化した。
 その結果、東京下町の低地に存在する沖積層と呼ばれる軟弱な地層の分布が極めて詳細に描き出された。さらに、一般に地盤が固いとされていた山の手の武蔵野台地の一部にも、沖積層に似た軟弱な地層が分布することが明らかになった。

東京下町の低地の地下の埋没谷形状(産総研資料より)。産業技術総合研究所(産総研)研究グループが、東京都心部の地下地質構造を3次元で立体的に見せる次世代地質図「3次元地質地盤図~東京23区版~」を公表した。3次元地質地盤図は、だれでも閲覧でき、東京23区の地震ハザードマップや都市インフラ整備などで活用されることが期待される。いっぽう、衛星や地図情報を組み合わせた新しい防災情報サービスを、地図情報のゼンリンや衛星放送スカパーJSAT、建設コンサルタント・日本工営が始めた。防災・減災テクノロジーの新ステージだ
東京下町の低地の地下の埋没谷形状(産総研資料より)。産業技術総合研究所(産総研)研究グループが、東京都心部の地下地質構造を3次元で立体的に見せる次世代地質図「3次元地質地盤図~東京23区版~」を公表した。3次元地質地盤図は、だれでも閲覧でき、東京23区の地震ハザードマップや都市インフラ整備などで活用されることが期待される。いっぽう、衛星や地図情報を組み合わせた新しい防災情報サービスを、地図情報のゼンリンや衛星放送スカパーJSAT、建設コンサルタント・日本工営が始めた。防災・減災テクノロジーの新ステージだ

 東日本大震災では、首都圏でも湾岸地域を中心に液状化被害が多数発生し、地震の揺れによる建物被害も広く確認され、地震被害に大きく影響を及ぼす地下浅部の地質地盤特性に高い関心が集まっている。また都市インフラ整備を効率的に進めるうえでも地質地盤情報は極めて重要だ。
 しかし、都市平野部は開発が進んでおり、地下の地層の正確な情報を得ることはむずかしい。東京都心部も例外ではなく、地下にどのような地層がどのように分布しているか、詳細は不明だった。

 産総研の地質調査総合センターでは、国土の基盤情報として全国の地質図の整備に取り組んできて、平野部の地質図整備では、地層の研究と独自開発の3次元モデリング技術をもとに、地下の地層の分布形状を立体的に可視化し、2018年には千葉県北部地域の3次元地質地盤図を国内で初めてウェブ公開した。そのノウハウをもとにこのほど、東京都区部の地下地質構造を示す3次元地質地盤図を完成させたもの。

 この3次元地質地盤図は、無償でだれでも簡単に閲覧できるので、東京23区の地震ハザードマップや都市インフラ整備などで幅広く活用されることが期待されている。2024年までには埼玉や神奈川など、首都圏の主要地域の地図もつくる計画だという。

●埋没谷底は最深部で深さおよそ80m

 東京下町の低地の地下には従来から、沖積層と呼ばれる軟弱な泥層を主体とする地層が、最終氷期(最盛期は約2万年前)に海面の低下により形成された谷を埋めるように分布することが知られていた。今回、この沖積層が埋積する埋没谷の3次元形状を詳細に描き出すことができた。埋没谷底は、東京湾岸の最も深いところで、深さがおよそ80mだった。

「山の手の武蔵野台地の地下の埋没谷形状」(産総研広報資料より)。一般に固い地盤とされる武蔵野台地の地下にも、一部に沖積層に似た軟らかい泥層で埋積された谷地形が埋没していることが明らかに
「山の手の武蔵野台地の地下の埋没谷形状」(産総研広報資料より)。一般に固い地盤とされる武蔵野台地の地下にも、一部に沖積層に似た軟らかい泥層で埋積された谷地形が埋没していることが明らかに

 いっぽう、山の手の武蔵野台地の地下についても、堆積年代や堆積環境などをもとに地層の区分を見直したところ、一般に地盤が固いとされていた台地の地下にも、一部に沖積層に類似した軟弱な泥層が昔の谷を埋めるように分布していることが明らかになった。この谷は低地の地下の谷よりもさらに古い、14万年前頃の氷期に形成されたもので、その後の約13万~12万年前の間氷期に海が侵入し、内湾の軟弱な泥層によって埋められた。

3次元地質地盤図の表示例(産総研広報資料より)。産総研のウェブサイト「都市域の地質地盤図」では、東京都心部の地下の地層の3次元的な広がりを、立体図や任意の箇所の地質断面図を描画して閲覧することができる
3次元地質地盤図の表示例(産総研広報資料より)。産総研のウェブサイト「都市域の地質地盤図」では、東京都心部の地下の地層の3次元的な広がりを、立体図や任意の箇所の地質断面図を描画して閲覧することができる

 3次元地質地盤図に示されるこのような地下の地質地盤情報は、地震ハザード予測や都市インフラ整備などに活用でき、立体図以外にも、従来の2次元の地質図ではできなかった任意の箇所の地質断面図の表示も可能。また、地質平面図では、興味のあるエリアを拡大して詳細に見ることができる(作成の基本縮尺は2万5000分の1)。

産総研:ついに完成 東京都心部の3次元地質地盤図

 

宇宙から災害リスクを可視化 『衛星防災情報サービス』

衛星事業・地図情報・建設コンサルタント分野の国内最大手3社がタッグ
衛星防災情報プラットフォームを構築

●衛星×地図データ活用し 水害等を予測・減災

 スカパーJSAT株式会社(東京都港区)、株式会社ゼンリン(福岡県北九州市)、日本工営株式会社(東京都千代田区)は、各社が保有する衛星データや地図データ、氾濫予測情報などを組み合わせ、近年多発する水害や土砂災害、地震、火山などによって発生する災害リスクの予測や、減災、被災後の早期復旧に活用できる国内初の『衛星防災情報サービス』の提供を開始している。この業務提携により、企業や自治体が管理する敷地や施設の災害リスクや災害発生後の被災状況を、日本全国1741市区町村全地域で、より高精度に把握することができるようになるという。個別建物レベルでの状況把握ができるものとしては、国内初のサービスとなる。

衛星防災情報サービスの「システム画面イメージ」(日本工営広報資料より)
衛星防災情報サービスの「システム画面イメージ」(日本工営広報資料より)

 同サービスは国内だけではなく、アジアをはじめとした海外での展開も予定している。災害が多い日本だからこそ防災領域を成長させ、ひいては同サービスで国連の定めるSDGs(持続可能な開発目標)の17のグローバル目標のうち、「9. 産業と技術革新の基盤をつくろう」、「11. 住み続けられるまちづくりを」、「17. パートナーシップで目標を達成しよう」の達成に向けてグローバルに貢献していくとしている。

スカパーJSAT・ゼンリン・日本工営:国内初の『衛星防災情報サービス』提供

『衛星防災情報サービス』紹介動画

 


▼《Bosai Plus》 No. 261/2021年07月01日号より(同P. 1(「もくじ」付き)へリンク

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