「温故創新」第3回 令和防災研シンポジウム

災害に対して劣勢の時代へ
これからの地域防災の知恵は

自然の外力が増大するなか、いま一度、
先人が培った知恵を発掘、「温故」として学び直す

【 災害の激甚化にインフラが追いつかない時代到来 どうする? 】

●「 防災士のシンクタンク」――令和防災研究所 防災士活動の強化に向けて

 一般社団法人令和防災研究所(所長:青山 佾(やすし)・明治大学名誉教授)による第3回シンポジウム「これからの地域防災の知恵~『温故創新』」が去る9月23日、リアル会場(申込み先着50名限定)を御茶ノ水ソラシティとして、またYouTubeオンライン・ライブ配信により開催された。
 同シンポジウム開催趣旨は、「気候変動による激甚化、頻発化する水害、切迫する巨大地震に対し『温故創新』の発想が必要な時代」とし、「都市が自然の外力に対して劣勢になる時代が到来しつつある」ことから、ここで「いまいちど先人が培った知恵を発掘し、『温故』として学び直すことが重要」としている。

令和防災研究所第3回シンポジウム
令和防災研究所第3回シンポジウム
令和防災研究所第3回シンポジウム「これからの地域防災の知恵~『温故創新』」案内チラシより
令和防災研究所第3回シンポジウム「これからの地域防災の知恵~『温故創新』」案内チラシより

 令和防災研究所は、「防災に関する研究」、「防災に関する情報の収集と提供」、「防災に関する啓発」、「防災士制度及び防災士活動の強化に資する活動」の4つを柱(定款より)に、2019年5月1日に発足。設立趣意書には、平成の時代の災害をはじめ、過去の幾多の災害の克服と防災・減災に向けてのわが国の災害対策を踏まえつつ、「災害大国として、日本は”BOSAI”において世界をリードしなければならない」とある。
 また、「平成の時代に誕生し、国民に支持され発展してきた防災士制度の推進の一翼を担ってきた有志が、横断的な研究所を通じて、防災研究を発展させ、防災士制度のさらなる発展に寄与する」ともある。

 理事には、加藤孝明・東京大学教授、玉田太郎・防災士研修センター代表取締役、中林啓修・人と防災未来センター主任研究員、成澤廣修(なりさわ・ひろのぶ)・文京区長、橋本茂・日本防災士機構事務総長、早坂義弘・東京都議会議員、廣井 悠(ゆう)・東京大学准教授、玉田三郎・日本防災士機構専務理事の8名が就いている。各氏のプロフィールは、災害・防災研究者から地方議会議員、行政の首長、防災士養成機関関係者などと分野横断的で多彩な顔ぶれで、いわゆる“研究所”の類型を超えた、今日ふうに言えば”防災のダイバーシティ(多様性)”に対応する研究所だ。

 今回のシンポジウムは第3回で、第1回は設立記念シンポジウムとして「平成災害史の教訓と令和に向けた課題」を、2019年9月23日、東京・千代田区の全国都市会館に約300名の聴講者を集めて開催。第2回は2020年9月22日、「令和時代の避難を考える~昭和・平成の災害を越えて」を、コロナ禍なかで感染防止対策を施し、人数制限による会場参加とオンライン映像配信で行っている。そのリポートはいずれも本紙既報だ。

防災プラス 2019年10月1日号(No. 219):平成災害史の教訓と令和に向けた課題

防災プラス 2020年10月1日号(No. 243):令和時代の避難を考える

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「温故創新」――これからの地域防災の知恵
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●かつての人びとの災害へのおそれを思い、防災意識の再構築を

青山 佾氏のプレゼンテーションより
青山 佾氏のプレゼンテーションより

 第3回シンポジウムでは冒頭、青山 佾(やすし)・令和防研究所長が挨拶に立ち、「国内外の災害事例から教訓を得て、新しい防災を考えることが温故創新につながる」と挨拶、今回の「温故創新」をテーマとする研究発表の意義を述べた。

加藤孝明氏による基調講演

 続く基調講演では、加藤孝明氏(肩書前出、以下省略)が登壇し、「これからの地域防災の知恵~『温故創新』」をテーマに講演、「2018年大阪北部地震でのブロック塀倒壊は、1978年宮城県沖地震でも起こった。ブロック塀は40年ごとに倒壊するのか」として、温故知新から温故『創新』」を提言。加藤氏は「これからは大災害時代+気候変動への対応が求められる」とし、「災害激甚化で、対策(インフラなど)が追いついて行けないどころか、激甚化のレベルと差が開いていく。水防災は河川管理者にまかせられず、かつての人びとの水害へのおそれを思い起こし、防災意識の再構築が必要」とした。 

橋本 茂氏のプレゼンより「蛇ぬけの碑」の説明
橋本 茂氏のプレゼンより「蛇ぬけの碑」の説明

 研究員・研究テーマの成果発表が行われ、中林啓修(ひろのぶ)・国士舘大学准教授が「『温故創新』から考えること」、早坂義弘氏が「首都直下地震の発災前に」、玉田太郎氏が「ホームサバイバル・トライアル」、橋本 茂氏が「温故創新~語り継ぎ、地域に根づかせるには」を報告した。

 このなかで橋本氏は、温故創新を考える契機として、2015年9月関東・東北豪雨鬼怒川決壊の被災者宅(納屋)の天井から吊り下げられていた小舟や、長野県南木曽町「蛇ぬけの碑(悲しめる乙女の像)」にある碑文「白い雨が降るとぬける」を紹介、「各地に残る自然災害伝承碑の見直しや、まちの危険箇所や防災拠点を見つけ出す子どもたちの“ぼうさい探検隊”の試みなどが重要」とした。

パネルディスカッション・パネラーの各氏。上左から右へ、加藤正明、中林啓修、早坂義弘、玉田太郎の各氏
パネルディスカッション・パネラーの各氏。上左から右へ、加藤正明、中林啓修、早坂義弘、玉田太郎の各氏
パネルディスカッション・パネラーの各氏。上左から右へ、廣井 悠、橋本 茂、青山 佾、閉会の挨拶で登壇した原 正之・日本防災士機構理事長の各氏
パネルディスカッション・パネラーの各氏。上左から右へ、廣井 悠、橋本 茂、青山 佾、閉会の挨拶で登壇した原 正之・日本防災士機構理事長の各氏

 パネルディスカッションには廣井 悠・東京大学教授も加わり、シンポジウム現地参加者やウェブ視聴者からの質問、主に「避難の課題」に答えるかたちで行われたが、このテーマとは別に、本紙は廣井氏の以下の発言に注目した――

 廣井氏は、「ある米国の研究者が、創新=イノベーションの起きやすい都市は、芸術家やLGBTなどいまで言う多様性に満ちた都市だという研究結果を発表した」とし、「つまり、地域で温故創新をやろうと思ったら多様性が重要。いつも防災士の仲間同士で議論しているのなら、防災士以外の別な視点を持つ人を仲間に加えたい。この集まりでも外国人や芸術家風の人がいないが、地域防災に新しい価値観を持った人を引き込み、“温故と型破りを融合する”ことでイノベーションが生まれる可能性がある」と述べた。

 これまで3回開催されたシンポジウムのパネルディスカッションにこれまで、女性の登壇はない。多様性以前に、少なくとも「男女共同参画の防災」については、本紙もこれまで強く期待し、女性参画を主張してきただけに、パネルディスカッションでの廣井氏の提言に応える他のパネリストからの発言がほしいところではあった。

(※本項掲載左写真はいずれもシンポジウムのYouTube配信より)

令和防災研究所

 

 

 

 

 


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