「災害を語り継ぐ」 語り部のリアル防災

ツナミリアルのリアル防災 語り部が喚起、防災への志

震災遺構などのハード整備見学と併せて、
「語り部」の学習プログラムが必須アイテム

【「 ツナミリアル」とは――語り部が喚起する新たな防災への志 】

 先ごろ、宮城県石巻市の東日本大震災遺構「門脇小学校」で、語り部の体験をもとに津波からの避難を自分ごととして考える『ツナミリアル』の体験会が開かれた。

河北新報:震災遺構・門脇小で防災学習会(9月10日付け)

 『ツナミリアル』とは、一般社団法人石巻震災伝承の会が東北大学災害科学国際研究所・佐藤翔輔准教授(災害情報学)の指導のもとで開発した、語り部の体験を共有する新しい「疑似体験型」防災学習プログラムだという。語り部が語る被災体験とその教訓を踏まえて、聞き手が「語り部の立場になったとき、どんな危険が考えられるか」「自分なら今後どう防災に取り組んでいくか」を考えようというものだ。

上写真:石巻市震災遺構 門脇小学校、下:石巻市震災遺構 大川小学校(石巻市震災遺構HPより)。いずれも東日本大震災によって被災。門脇小学校では津波来襲時に在校していた275名の児童は裏山に無事避難。しかし、大川小学校では74名の児童と教職員10名のほか、学校に避難してきた地域住民や保護者も津波に巻き込まれて死亡、学校の対応に過失があったとして裁判になった。2校とも震災遺構となって震災学習の場となっている
上写真:石巻市震災遺構 門脇小学校、下:石巻市震災遺構 大川小学校(石巻市震災遺構HPより)。いずれも東日本大震災によって被災。門脇小学校では津波来襲時に在校していた275名の児童は裏山に無事避難。しかし、大川小学校では74名の児童と教職員10名のほか、学校に避難してきた地域住民や保護者も津波に巻き込まれて死亡、学校の対応に過失があったとして裁判になった。2校とも震災遺構となって震災学習の場となっている

 ちなみに本紙は、9月1日「防災の日」創刊12年ということもあって、前々号(8月15日号/No. 288)で「災害伝承施設への旅」、前号(9月1日号/No 289)で「関東大震災から99年」と銘打った特別企画を打ち、本号では「災害を語り継ぐ」として、「災害語り部」を取り上げる。これで、災害教訓特別企画・3連作ということになる。

 本紙「災害伝承施設への旅」で、宮城県が国と共同運営する石巻市の「みやぎ東日本大震災津波伝承館」を取り上げ、県と共に新方針を立案する佐藤翔輔准教授の「語り部の定期講話などで多くの人が来館し、さまざまな伝承活動に使われる空間にしたい」との佐藤氏の抱負を紹介した。石巻市では「ツナミリアル無料体験会」を新しい「疑似体験型」防災学習プログラムだとして定期開催する(下記リンクにスケジュール)。

震災語り部の活動例(陸前高田市資料より)
震災語り部の活動例(陸前高田市資料より)
津波被災地名取市閖上で語り部の体験談を聞く海外の参加者(防災白書より)
津波被災地名取市閖上で語り部の体験談を聞く海外の参加者(防災白書より)

 震災遺構門脇小学校では、本年度4回の開催を予定している。ツナミリアル・学習プログラムは、参加者が「語り部の立場になったとき、どんな危険が考えられるか」→「語り部の体験と教訓」→これを受けて「自分が今後どう防災に取り組んでいくかを考える」というもの。30分で質と効果の高い防災学習が行えるよう工夫されており、語り部の体験を共有し、津波からの避難を自分ごととして考えられるという。

 ちなみに 8月19日に開催されたツナミリアルでは、語り部が「石巻市半島部の小学校で17mの巨大津波に遭遇。住民の呼びかけで、子どもたちを裏山に避難させ、九死に一生を得た体験から、学校における津波防災上の教訓を語っている。

石巻市震災遺構:【震災遺構門脇小学校】「ツナミリアル無料体験会」を定期開催

注目される「ユース(若者)語り部」――若い世代が災害を語り継ぐ

 いっぽう本紙提携紙・WEB防災情報新聞は、「若者が自らの被災体験を語る『ユース語り部』に大きな可能性」という記事を掲載している。これは、一般社団法人「子どものエンパワメントいわて」が主催する「ユース語り部が持つ心のケア力&防災教育推進力向上事業 報告会」のリポートだ。同事業は、「なぜ語る」「何を語る」「語りが自分に与えた影響は?」「語りが聞き手に与えたインパクトは?」など、「ユース(若者)語り部」の災害体験の語りが持つ意味をより深く追求することを目的とする。Yahoo!基金の助成を受けて子どものエンパワメントいわて(E-Patch)が運営する。

WEB防災情報新聞:『ユース語り部』に大きな可能性(9月11日付)

 近年の大災害――大災害に限らず、局所的な地震・豪雨・洪水・噴火災害であっても、被災当時に子どもだった世代の人は、その災害を体験した最後の世代だとも言える。その世代の人たちがこれからの社会、防災・減災を担う立場になる。阪神・淡路大震災を子ども(5歳以上として)のころ体験した人は、いまは30代半ばであり、東日本大震災の被災経験者であれば高校生より上の世代になっていることから、「ユース語り部」が本格的に活動を始めたとも言える。
 彼らは、子どもの目で見て経験した災害体験を振り返り、また、被災後の人生の歩み、現在、未来の展望などについても語る。そこから見えてくる新たな防災・減災の視点を探り、語り継いでいくこと――その意義は、災害・防災減災の”専門家、有識者”の視点とは異なり、新しい発見もありそうだ。

被災体験談は、いつの時代も、だれにとっても大きな教訓

 災害教訓は、語り継がれることにその本質はある。教訓を「忘れない、伝える、活かす、備える」ことに直結するからだ。その活動のひとつとして、「語り部」がいる。とは言え、災害教訓は「災害教訓継承専門調査会」のように国が主宰・調査する公的なものから、災害記念碑や民俗伝承・口伝、アーカイブなどまで多種・多様だが、「語り部」は基本的には個人の被災体験に基づくいわば“個人の感想”ではある。

 しかし、置かれた状況・環境下でどう行動したか(本人は助かった)、どう感じたか、今後同じような災害への備えをどう考えるかの体験談は、いつの時代も、だれにとっても大きな教訓となる。当該災害の全体概要の知見、公的な教訓のとりまとめと併せて“学ぶ”ことにより、私たちに大切な備えのヒントを伝えてくれることは確かだろう。

南三陸の観光ガイドサークル「汐風」による受入れ人数・件数の推移(「東日本大震災と津波災害から6年間の震災伝承の特徴」より)
南三陸の観光ガイドサークル「汐風」による受入れ人数・件数の推移(「東日本大震災と津波災害から6年間の震災伝承の特徴」より)

 東日本大震災の震災学習プログラムは、被災地での観光や研修、教育旅行などで東北地方を訪れる団体・個人客が選択可能なメニューとして定着している。本紙が前々号の特別企画を「災害伝承施設への旅」と銘打ったように、災害遺構などを観光する「ダークツーリズム」という言葉も、東日本大震災以降知られるようになってきた。その”オプショナルツアー”として、震災遺構やメモリアルパークなどのハード整備見学と併せて、「語り部」の学習プログラムを必須アイテムとして、大震災を学び直してみたい。

TeLL-NetとDRI共催[東日本大震災10年~災害語り継ぎに関する研究成果発信フォーラム」(2021年)より。2005年第2回国連防災世界会議(神戸市開催)を前に、2004年1月に「国際防災・人道支援(DRA)フォーラム2004」が「大災害を語り継ぐ」をテーマとして開催。世界会議の成果は「兵庫行動枠組み(HFA)」として世界に発信され、「大災害を語り継ぐ」ことの大切さも認められた。これを受けて、同フォーラムが再開されている
TeLL-NetとDRI共催[東日本大震災10年~災害語り継ぎに関する研究成果発信フォーラム」(2021年)より。2005年第2回国連防災世界会議(神戸市開催)を前に、2004年1月に「国際防災・人道支援(DRA)フォーラム2004」が「大災害を語り継ぐ」をテーマとして開催。世界会議の成果は「兵庫行動枠組み(HFA)」として世界に発信され、「大災害を語り継ぐ」ことの大切さも認められた。これを受けて、同フォーラムが再開されている

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