「わかる・伝わる」ハザードマップ

誰ひとり取り残さない避難へ「共助」や「地域の力」が不可欠

印刷物・ICT・代替手段のハザードマップ情報を
シームレスに導く工夫に向けて、集結!

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●障害者対応のハザードマップ「作成済み」の自治体 2.6%!
 障害者が(健常者と)等しく情報を得られる社会をめざせ
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 「災害犠牲者ゼロをめざす」をモットーとする本紙はこれまで、防災と福祉の連携、誰一人取り残さない防災(障害者、要援護者、健常者も含めて)=インクルーシブ防災を推し進める記事企画を多く打ち出してきた。その一環として本号では、“ハザードマップのユニバーサルデザイン”への取組みを取り上げる。

 自治体等が作製する水害等ハザードマップ(「防災マップ」とも)には、洪水・内水・高潮・津波・土砂災害の種類があり、一般的には「自然災害による被害の軽減や防災対策に使用する目的で、被災想定区域や避難場所・避難経路などの防災関係施設の位置などを表示した地図」という定義だ。その情報は、災害時の住民における安全確保に役立つことが期待され、住民すべてに向けて(障害のある人たちにも等しく)提供されることが基本であることは言うまでもない。

 国土交通省が2021年に行った各種ハザードマップの作成・公表状況の調査によると、洪水ハザードマップについて98%の市区町村で作成が完了(2021年7月現在)しているなど、順調に作成が進んでいることは喜ばしいことではある。しかし、一般住民のあいだでハザードマップの存在の認知度は高まってきてはいるものの、その情報の理解には一定のハードルがあることもわかってきたという。

 また、本来はあらゆる住民主体に災害リスクを伝えることを目的にしながらも、「障害者に対応した水害ハザードマップ」を「作成済み」の自治体は16都道府県の41市区町村にとどまる。これは調査対象の1591自治体のわずか2.6%にしかなっておらず、「作成中・検討中」も53市町村=3.3%で、ほとんどの自治体(1471自治体=92.5%)は「作成の予定なし」という回答だった。加えて、現在のハザードマップは、利用者の特性、例えば視覚障害に対応しておらず、そもそもハザードマップに示している紙面の情報へのアクセスが困難な場合もあるのだ。

 本年5月25日、障害者が障害のない人と同じように情報を得られる社会を目指す「障害者情報アクセシビリティー・コミュニケーション施策推進法」が公布・施行された。こうした背景のもとで国土交通省は、ハザードマップの活用についての課題や、視覚障害者などすべての人にとってわかりやすい水害リスク情報の提供のあり方を検討する有識者会議「ハザードマップのユニバーサルデザインに関する検討会」(座長:田村圭子・新潟大学危機管理本部危機管理室 教授)を、2021年12月から開催してきた。
 第4回目となる11月29日の同検討会で、「『わかる・伝わる』ハザードマップのあり方について 〜骨子(案)〜」がまとめられたのでその概要をリポートしたい。

「ハザードマップのユニバーサルデザインに関する検討会(2021年12月23日〜)」のスキームより
「ハザードマップのユニバーサルデザインに関する検討会(2021年12月23日〜)」のスキームより
障害の特性に応じたハザードマップの作成状況(国土交通省資料より)
障害の特性に応じたハザードマップの作成状況(国土交通省資料より)

ハザードマップのユニバーサルデザインに関する検討会報告:「わかる・伝わる」ハザードマップのあり方について 〜骨子(案)〜

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●印刷物・ICT・代替手段(点字・点図・音声案内など)をつなぐ
  障害者と周囲をつなげる「共助」「地域の力」が不可欠
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 「ハザードマップのユニバーサルデザインに関する検討会報告「『わかる・伝わる』ハザードマップのあり方について 〜骨子(案)〜」によれば、骨子案は、「避難行動の判断等につながりづらい人や地図情報にアクセスがしづらい障害のある人に主眼を置く」とし、「『わかる・伝わる』ハザードマップ」のあり方について、「ハザードマップは障害のある人たちにも等しく提供されることを基本」、「印刷物やICTを活用した情報提供はすべての障害のある人たちがアクセスできることが必要」、「一つの形に縛られず、複数の種類で情報を示すことが必要」、「障害のある人と周囲の人たちとをつなげる工夫が重要」、「誰ひとり取り残さない避難に係る課題についてはハザードマップだけではすべて解決できない」と論点をとりまとめている。

 また、ハザードマップのユニバーサルデザインについては、「水害ハザードマップは『地図面』」と『情報・学習編』の2つで構成」、「自治体は、手引きの記載事項の中から、独自に取捨選択し、ハザードマップを作成」、「ハザードマップはシンプルでわかりやすく、情報は絞り込みが必要」、「平時に読むことを前提としたハザードマップとして必要な情報を掲載」、「避難行動の判断として特に理解されるべき3つの軸(「屋内安全確保」等の可否判断、「立退き避難先」「避難経路」の選択、避難行動開始タイミングの決定」をあげ、それぞれハザードマップで示し理解されるべき情報を示している。

 とくに障害者に対応したハザードマップの伝達手法としては、点字、音声(デイジー:DAISY:Digital Accessible Information System=読み上げ音声付きデジタル図書)、音声(Uni-Voice:スマホをかざして印刷物の内容を読み上げてくれるアプリ)、点図、立体地図、触地図(道路、鉄道、河川などを浮き上がらせ、点字が組み込まれた地図)、手話、「やさしい日本語」によるハザードマップなどがある。

試行版Ⅰ(チャットボット)の概要と主な意見(検討会資料より)
試行版Ⅰ(チャットボット)の概要と主な意見(検討会資料より)
試行版Ⅱ(3Dマップ)の概要と主な意見(検討会資料より)
試行版Ⅱ(3Dマップ)の概要と主な意見(検討会資料より)
試行版Ⅲ(触地図)の概要と主な意見(検討会資料より)
試行版Ⅲ(触地図)の概要と主な意見(検討会資料より)

 骨子案では、印刷物・ICT・代替手段(点字・点図・音声案内など)の媒体ごとに提供できるハザードマップ情報内容を整理し、これをシームレスに導くなどの工夫が求められるとし、今後の展開については、自治体が参考となるような事例整備を継続し、「現在」、「今後の推奨事項」、「将来の目標」の3段階で提示するとしている。

 骨子案は、現状の各種自治体・研究機関・団体・民間などでの障害者向けハザードマップ作成の試み・取組みも紹介、「おわりに」では、ハザード情報の発信者側の努力だけでは「誰ひとり取り残さない避難」の実現はむずかしく、情報の受け手側の環境の醸成が大切だとし、環境の醸成には「共助」や「地域の力」が不可欠だと結んでいる。
 同検討会は今年度末に検討会報告書をとりまとめる予定となっている。

ハザードマップのユニバーサルデザインに関する検討会

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