「災害を語り継ぐ」 語り部のリアル防災

 先ごろ、宮城県石巻市の東日本大震災遺構「門脇小学校」で、語り部の体験をもとに津波からの避難を自分ごととして考える『ツナミリアル』の体験会が開かれた。『ツナミリアル』とは、一般社団法人石巻震災伝承の会が東北大学災害科学国際研究所・佐藤翔輔准教授(災害情報学)の指導のもとで開発した、語り部の体験を共有する新しい「疑似体験型」防災学習プログラムだという。語り部が語る被災体験とその教訓を踏まえて、聞き手が「語り部の立場になったとき、どんな危険が考えられるか」「自分なら今後どう防災に取り組んでいくか」を考えようというものだ……

《関東大震災から99年》わが国災害史上最悪の教訓

 1923(大正12)年9月1日に発生した関東大震災から、この9月1日は99年となる。来年2023年9月1日には100周年を迎え、多くの周年記念イベントや教訓をめぐる論考がメディアをにぎわすと思われるが、本紙はそれに先立ち、創刊12年号ということもあって、もうひとつの視点から関東大震災を取り上げたい。  2008年3月に公表された中央防災会議・災害教訓の継承に関する専門調査会報告書『1923 関東大震災』は、近代から現代に至るわが国の災害教訓としてもっとも重要な報告書のひとつだと言えるだろう。本紙はこれまで何度か関東大震災を取り上げてきたが、なかでも報告書が特記事項のひとつに挙げた「流言による被害の拡大」という側面は、現代日本にとっても同時代の教訓として永続的に記憶・記録・内容を更新し続けなければならない“トゲ”になり得る……