豊後水道の地震と南海トラフは通底するか?

 2024年4月17日23時14分頃に発生した「豊後水道の地震」は、マグニチュード(M)6.6とされている。南海トラフ地震の想定震源域内で発生した地震ではあったが、南海トラフ地震との関係を調査するマグニチュードの基準(M6.8)未満の地震で、気象庁は、「地震活動等については注意深く監視している」とした。幸い津波は発生せず、揺れによる人的被害、建物被害も少なかった。しかし、住民、防災関係者はだれしも南海トラフ巨大地震の発生を想起し、緊張しただろう。そして政府も、地震直後に危機管理センターに官邸対策室を設置するなど緊急対応に走った……

いま そこにある「巨大災害の危機」

 土木学会の土木計画学研究委員会は2022年度から「国土強靱化定量的脆弱性評価委員会」を設置し、首都直下地震や三大港湾の巨大高潮、全国の河川における巨大洪水が生じた場合にどれだけの経済被害を受けるのかを推計(「脆弱性評価」)、同時に、防災インフラ投資がどれほどの減災効果を持つのかを、最新データと技術を用いて「定量的」に評価・推計する研究を進めている……

巨大災害を「迎え撃つ」気概を

 本紙は2月1日付けで齋藤徳美・岩手大学名誉教授の特別寄稿「能登半島地震に思う」を掲載、サブタイトルを「災害を『迎え撃つ』体制を」とした。「災害を『迎え撃つ』体制を」は同本文からの引用で本紙の恣意的な編集によるサブタイトルだった。やや長文になるがここでそのモチーフとなった部分を引用すると、次のようだ――

能登半島地震に見るあるべき「防災・支援」

 遡って2012年7月31日、中央防災会議専門調査会「防災対策推進検討会議」は「最終報告~ゆるぎない日本の再構築を目指して~」を決定・公表した。「最終報告」は、「東日本大震災を踏まえ、私たちが学び、将来に向かって約束として果たすべきことをまとめ、今後のわが国の防災対策の方向性を示した」とした。東日本大震災発災から1年4カ月ほどを経てまとめられたものだった……

地殻変動半島 いまだ“災中” 広域避難困難 原発もうムリ!

 能登地方では、2018年ごろから地震が断続的に続いている。とくに2020年12月ごろから地震活動が活発化(能登群発地震)し、22年6月には震度6弱、23年5月には震度6強の大地震に襲われた。今回の地震は一連の群発地震のなかでも最大規模となる。報道によれば、輪島市では防潮堤や海沿いの岩礁がおよそ4m隆起したことが産業技術総合研究所地質調査総合センターの現地調査で確認された。同センター・宍倉正展グループ長は、「4mもの隆起はめったにないことで、数千年に1回の現象」と指摘……

COP28に「健康の日」 気候変動に健康リスク

 COP28で本紙がとくに注目したのは、12月3日に「健康の日(Health Day)」がCOP28に初めて設定されたことだ。気候変動の健康影響について光を当て、各国の環境大臣と保健大臣による議論が行われた。「気候変動と健康リスク」とはなにか――近年“エマージング・リスク(” Emerging Risk)として危機管理分野のキーワードになった新たな危機要因とはなにか、以下、見てみよう……

「世界最大級の変動帯に 地層処分の適地はない」

 原子力発電(以下、「原発」)の使用済み核燃料から出る高レベル放射性廃棄物(以下、「核のゴミ」)の処分地選びをめぐり、地球科学の専門家有志300名余が去る10月30日、「日本に適地はない」とする声明を公表した。地殻変動帯に位置する日本の国土では、廃棄物を10万年にわたって地下に閉じ込められる場所を選ぶのは不可能と指摘し、開かれた検討機関を設置したうえでの処分の抜本的な見直しを求めた……

浸水想定地域の浸水被害 「想定内被災」は想定外か

 台風13号とその余波の熱帯低気圧による大雨で、茨城県日立市では日立市役所で浸水被害が発生した。記録的な大雨の影響で、市役所の近くを流れる二つの川(数沢川と平沢川)が氾濫したためだ。気象庁によると、日立市の9日午前7時50分までの24時間降水量は282.5mmで、観測史上最大を記録した。市によると、8日夕方ごろから猛烈な雨に見舞われたという。市庁舎の1階と地下に水が入り込み、電源機器が水没して停電した……

関東大地震の揺れを“読んで”追体験する

 本年は関東大震災から100年の年で、発災日である9月1日周辺は言うに及ばず、1年を通じて防災啓発イベントが盛りだくさんだ。そこで本紙が今号で試みるのは、やや異色の切り口――発災当時の著名人(文人、知識人、有名人、政治家など)による記録に残る「揺れ体験記」の数例だ。現代、私たちは地震防災科学の成果で、起震車で関東大震災(大正関東地震)の揺れそのものを“疑似体験”できるのだが、当時の著名人による大震災の分析・評価・論考とはひと味異なり、地震という圧倒的な自然の不条理に遭遇した生身の人間の恐怖体験を取り上げようというものである……

日本・千島海溝 具体的な応急対策活動計画 

 中央防災会議・幹事会が去る5月23日、北海道から東北地方の太平洋沖にある日本海溝・千島海溝の巨大地震に備え、応急対策に関する具体的な計画を決定した。警察、消防、自衛隊から最大で計15万人規模の広域応援部隊を派遣し、想定される被害規模に応じて北海道に7割、青森、岩手、宮城の東北3県に3割を送る計画だ……

揺れる地殻変動帯―日本列島 再び

 石川県能登地方で5月5日14時42分ごろ、M6.5の地震が発生。震源の深さは12kmで、石川県珠洲市(すずし)で震度6強を観測したほか東北地方から中国・四国地方にかけて震度5強~1を観測。この地震で屋根を修理していた男性1人が転落して死亡した。石川県内で住宅や神社の鳥居が倒壊するなどの被害が出た。同日5日21時58分ごろに再び同地方でM5.9の地震があり、珠洲市で最大震度5強を観測した……

あれから12年 原発とトランスサイエンス

 2011年3月11日14時46分に発生した東北地方太平洋沖地震(M9.0)とそれに伴う津波により、東京電力福島第一原子力発電所で原子力事故が発生した。この地震による災害と原発事故は同年4月1日、閣議で「東日本大震災」と命名される。  東電福島原発事故は、1986年4月のチェルノブイリ原子力発電所事故以来、最も深刻な原子力事故となり、国際原子力事象評価尺度(INES)の7段階レベルで最悪レベルの7(深刻な事故)に引き上げられた。今日までレベル7に分類されている事故は、チェルノブイリ原子力発電所事故と、福島第一原子力発電所事故の2つのみだ……

“同次元”としてのトルコ・シリア巨大地震

 2023年2月6日現地時間午前4時17分(日本時間同10時17分)、トルコ南東部のシリアとの国境付近・ガズィアンテプ・カフラマンマラシュ県境付近を震央とするマグニチュード(M)7.8の巨大地震が発生、その約9時間後の13時24分(同19時24分)にカフラマンマラシュ県のエルビスタン地区で後発大地震(M7.5)が発生した。2つの巨大地震とそれらに誘発された多くの余震により、トルコ南東部およびシリア北西部において、これまでに両国で合わせて3万5000人以上が死亡したとの両国当局の発表や報道があり(2月14日現在)……

首都直下地震 想定シナリオに想像力で備える

 東京都は首都直下地震などによる被害想定を10年ぶりに見直し、「首都直下地震等による東京の被害想定」として去る5月25日公表した。東日本大震災を教訓として2012年に策定した「首都直下地震等による東京の被害想定」と、2013年策定の「南海トラフ巨大地震等による東京の被害想定」の見直しで、東京都防災会議(会長・小池百合子知事)の地震部会(部会長:平田 直・東京大学名誉教授)で検討を進めてきた……

地球規模の巨大災害 想像力で備える

 「Ring of Fire(炎の輪)――南太平洋トンガ諸島付近のフンガ・トンガ-フンガ・ハアパイ海底火山噴火を報じる海外メディアを見て、日本を含む環太平洋火山帯がこう呼ばれていることを知った」という記事があった。“炎の輪”は下図版にあるように、まさに地球を抱くように広がる……

日本海溝・千島海溝巨大地震の最悪想定に備える

 中央防災会議は「日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震モデル検討会」を2015年2月に設置、最大クラスの震度分布・津波高等の推計結果を2020年4月に公表した(岩手県の浸水想定については同年9月11日に公表)。この震度分布・津波高などに基づき被害想定と防災対策を検討するために、2020年4月に「日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震対策検討ワーキンググループ」が設置され、同ワーキンググループは昨年(2021年)末の12月21日、日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震の被害想定を公表した……

『DART:Planetary Defense』―NASAの地球防災

 米国航空宇宙局(NASA)は11月23日午後10時21分(現地時間)、地球に接近し衝突のおそれのある小惑星の軌道を変えるために、意図的に実験機を小惑星に衝突させる「DART」(Double Asteroid Redirection Test)計画の実験機打ち上げに成功した。DART機器を搭載したスペースXのロケット「ファルコン9」は、カリフォルニア州バンデンバーグ宇宙軍基地から打ち上げられ、その模様はNASAのテレビや公式サイトで生中継された……

想定内 vs. 想定外―温暖化抑止と海底火山軽石漂着

 国連の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」が、「第1作業部会」による地球温暖化の「自然科学的根拠」をまとめた「第6次評価報告書」を去る8月9日に公表し、今後20年以内に産業革命前からの気温上昇がパリ協定の目標である1.5度に達する可能性があること、そして、温暖化の原因は人類が排出した温室効果ガスであることについて従来の表現より踏み込んで「疑う余地がない」と断定したことは記憶に新しい。  昨日10月31日、国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)が、英国グラスゴーで始まった……

首都直下トライアル「災害は忘れたからやってくる」

 10月7日22時41分、千葉県北西部・深さ75kmを震源とするマグニチュード(M)5.9(暫定値)の地震が発生した。気象庁によると、最大震度5強を埼玉県川口市・宮代町、東京都足立区の3つの市区町村で観測したほか、東北地方から近畿地方にかけて震度5弱~1を観測した。津波はなし。  長周期地震動については、千葉県北西部、東京都23区で長周期地震動階級2を観測。これらの地域の高層ビル高層階等では、物につかまらないと歩くことがむずかしい、棚にある食器類、書棚の本が落ちることがあるなどの大きな揺れになった可能性がある。また、緊急地震速報(警報)が、この地震の地震波検知から3.7秒後の22時41分38.5秒に発表されている……

千島海溝は活きている〜道の巨大津波想定

 北海道が「北海道太平洋沿岸の津波浸水想定」を去る7月19日公表した。これを機に本号特別企画はあえてその概要紹介とする。  あえてというのは、本紙は前号のコラムで「アラスカ半島でM8.2の地震 “ビッグ・リマインダー!”…(チリ地震津波、元禄津波の想起)」と題して「遠地津波」(チリ地震津波、元禄津波)への警告を発したように、また本紙企画のやや古い引用だが、2018年1月1日号(No. 177)では「雪氷津波 千島海溝“超巨大地震 切迫”――厳冬期の津波が現実的課題に」を取り上げたように――北海道太平洋沿岸の津波想定を(” 警告の)リマインダー”としたいからだ……