浸水想定地域の浸水被害 「想定内被災」は想定外か

 台風13号とその余波の熱帯低気圧による大雨で、茨城県日立市では日立市役所で浸水被害が発生した。記録的な大雨の影響で、市役所の近くを流れる二つの川(数沢川と平沢川)が氾濫したためだ。気象庁によると、日立市の9日午前7時50分までの24時間降水量は282.5mmで、観測史上最大を記録した。市によると、8日夕方ごろから猛烈な雨に見舞われたという。市庁舎の1階と地下に水が入り込み、電源機器が水没して停電した……

防災白書発行60年を振り返り 関東大震災100年を総括する

 「2023(令和5)年版防災白書」が去る6月16日、閣議決定・公表された。2023年は、1923(大正12)年関東大震災から100年の節目の年に当たる。白書は、この100年の災害対策の充実・強化の経緯や、わが国を取り巻く様々な環境の変化を俯瞰することは、今後の災害対策の大きな方向性を考えるうえで有意義であるとし、「特集1」とて、「関東大震災と日本の災害対策」をテーマに取り上げている(「特集2」は「2022年度に発生した主な災害について」)……

わがまちの災害リスク~空き家、老朽化マンション

 全国で空き家が増えている。総務省の住宅・土地統計調査(5年ごと/2018年調査)によれば、空き家の総数はこの20年で約1.5倍(576万戸→849万戸)に増加している。いっぽう国土交通省の調査では、賃貸用や売却用などを除いて、人が長い間住んでいない住宅は349万戸。少子高齢化、人口減の時代を迎え、空き家は今後はさらに増えると見込まれている。このまま相続放棄などで空き家が放置され続けると、防犯(放火なども含めて)上も問題が大きく、周辺環境の悪化や自然倒壊などにもつながる。ひいては大地震などでの倒壊・火災延焼の要因ともなるから、防災まちづくりにおいてももはや放置できない状況となっている……

日本・千島海溝 具体的な応急対策活動計画 

 中央防災会議・幹事会が去る5月23日、北海道から東北地方の太平洋沖にある日本海溝・千島海溝の巨大地震に備え、応急対策に関する具体的な計画を決定した。警察、消防、自衛隊から最大で計15万人規模の広域応援部隊を派遣し、想定される被害規模に応じて北海道に7割、青森、岩手、宮城の東北3県に3割を送る計画だ……

5月は「水防月間」〜流域治水の「自分ごと化」を~

 国土交通省では毎年5月(北海道は6月)を「水防月間」と定めている。気候変動の影響により頻発・激甚化する自然災害に対し、流域全体を俯瞰し、あらゆる関係者が協働して治水対策に取り組む「流域治水」の実効性を高める重要な取組みの一つとなる。また、出水期=梅雨や台風の時期を迎えるにあたり、国民一人ひとりが水防の意義と重要性について理解を深められるよう、防災・減災の取組みの一環としてこの期間、全国各地域で総合水防演習などの水防訓練や水防団などと河川管理者による共同巡視ほか、様々な取組みが行われる……

大規模災害ゴミ対策のグランドデザイン

 環境省は去る3月23日、日本海溝・千島海溝沿いで想定されるマグニチュード(M)9級の巨大地震が起こった場合、災害廃棄物(以下、「災害ゴミ」)が最大で2717万トン発生するとの推計を公表した。津波による泥などの堆積物は含んでいない。  同じ条件で比較すると、処理完了に3年かかった東日本大震災で発生した約2千万トンの災害ゴミを上回る。災害ゴミの推計量は、岩手県沖から北海道沖を震源とする「日本海溝モデル」が最大で、北海道沖から千島列島沖にかけての「千島海溝モデル」では1042万トンとなっている……

究極の“アナログ津波防災”―「防集」

 「事前復興」という防災用語がある。とくに阪神・淡路大震災以降浮上した災害・防災・復興研究の考え方で、「災害が発生した際のことを想定し、被害最小化につながる都市計画やまちづくりを研究・計画・推進」することだ。今日、市町村における防災事業の推進における主要事業である減災や防災まちづくりの一環として行われる取組みのひとつともなっている。この事前復興まちづくりの事例として、南海トラフ巨大地震での大津波を想定する「高知県事前復興まちづくり計画」を取り上げる……