熱海土石流 盛り土×土石流危険渓流

「土石流危険渓流」沿いにつくられたまちを襲った土石流
――規制を超えた盛り土とともに「人災」か

●宅地目的外の盛り土(もりど)×土石流危険渓流沿いのまち=“人災”か

 7月3日午前、静岡県熱海市の伊豆山(いずさん)地区で大規模な土砂崩れが発生し、約130軒の住宅や車が土砂に流され、土石流は相模湾にまで達した。これまでに11人の死亡が確認され(7月14日現在)、まだ17人の安否が分かっていないという。被害を受けたまち(住宅など)は、「土石流危険渓流」(本紙P. 4参照)沿いにあった――

7月3日午前、静岡県熱海市の伊豆山(いずさん)地区で大規模な土砂崩れが発生し、約130軒の住宅や車が土砂に流され、土石流は相模湾にまで達した。7月14日現在、11人の死亡が確認され、17人の安否が分かっていない。上画像は、国土地理院地図より、熱海市伊豆山地区における「梅雨前線に伴う大雨による崩壊地等分布図(第3報)」(集水域あり)より。国土地理院が2021年7月6日に撮影した空中写真から、地山・土砂が見えている部分を判読したもの(崩壊地の位置を把握するための資料で、人家等に被害のない箇所もプロットしたもの)
7月3日午前、静岡県熱海市の伊豆山(いずさん)地区で大規模な土砂崩れが発生し、約130軒の住宅や車が土砂に流され、土石流は相模湾にまで達した。7月14日現在、11人の死亡が確認され、17人の安否が分かっていない。上画像は、国土地理院地図より、熱海市伊豆山地区における「梅雨前線に伴う大雨による崩壊地等分布図(第3報)」(集水域あり)より。国土地理院が2021年7月6日に撮影した空中写真から、地山・土砂が見えている部分を判読したもの(崩壊地の位置を把握するための資料で、人家等に被害のない箇所もプロットしたもの)
地理院地図より「土砂堆積範囲図(第3報)」

 土石流は断続的に発生し、標高400mの起点から約2kmにわたり流れ下ったとされる。土砂は約5万5500立方mにのぼると推定。流れ落ちた土石流のほとんどが、起点付近の盛り土だった可能性があるとして検証が進められている。盛り土は、県条例による基準の3倍を超える高さまで積まれていたという。災害リスクが高い状態はなぜ見過ごされてきたのか。盛り土の崩落は過去にもたびたび起きているが、今回のような危険な盛り土の存在について、詳しくわかっていないのが実情である。

 盛り土の規制は目的や規模で変わり、大規模な宅地の場合は「宅地造成等規制法」で工法などに厳しい規制があり、土砂災害対策も求められる。しかし、宅地目的以外でできた盛り土は直接規制するのがむずかしく、国土交通省は今回の問題を受け、自治体や関係省庁と協力して全国の盛り土のリスク把握に乗り出すという。

熱海土砂災害での東京消防庁緊急消防援助隊の活動状況より(東京消防庁HPより)
熱海土砂災害での東京消防庁緊急消防援助隊の活動状況より(東京消防庁HPより)

●防災用語のより正しい理解から 的確な防災対応行動が

 このところわが国では大規模水害が続き、国は避難情報や防災気象情報の改定を行うなど、対策・対応に追われてきた。とくに近年は、4年続けていずれも7月上旬に大規模水害が発生している――2020年7月3日、熊本県などから始まった「令和2(2020)年7月豪雨」では、九州のほか中部地方や中国・四国でも被害が相次ぎ80人以上の犠牲者を出した。2019年7月上旬には九州南部で大雨が続き、鹿児島県内で2人が死亡。2018年7月の「西日本豪雨」では6日ごろから岡山、広島、愛媛県を中心に大雨が続き、死者は全国で250人以上にのぼった。2017年7月5日は福岡、大分両県で約40人が犠牲になる「九州北部豪雨」が発生した。
 「数十年に1度」の雨を示す大雨特別警報が17、18、20年に出されいて、4年とも「線状降水帯」が発生している。もちろん、これ以前でも7月に大規模水害は起こっている。

 国は、災害対策基本法改正で「避難勧告」を廃止して「避難指示」に一本化したほか、避難指示(警戒レベル5)発令で「緊急安全確保」の発令、大雨による災害発生の危険度が急激に高まるなかで、線状の降水帯によって非常に激しい雨が同じ場所で降り続いている状況を「線状降水帯」というキーワードを使って解説する情報「顕著な大雨に関する情報=線状降水帯情報(発生情報)」の提供を新たに始めるなど、地域防災関係者にとってもフォローがむずかしいほど新たな情報が新設・更新されている。

 こうした状況を受けて国土交通省は、主に防災行政と報道機関の共通認識を図ることを狙いに、防災用語の解説、住民へのわかりやすい伝達のしかた、その情報を受けた住民の対応行動の具体例などをまとめた「防災用語ウェブサイト」を立ち上げた。
 同サイトは、国・行政の、ときにはこむずかしい印象の防災用語を住民に“翻案”する役割を持つ地域自主防災、防災士などにとっても活用したいサイトになりそうだ(掲載用語数:全79 *2021年6月29日時点)。

国土交通省:防災用語ウェブサイト(水害・土砂災害)

●菅首相の“重い言葉”――「線状降水帯発生予測を前倒して進める」

 それにしても、なぜ毎年7月上旬に集中豪雨が発生し、大規模水害が起こっているのか。地球温暖化が背景にあるとしても、7月に大雨被害が集中する理由について専門家は、「東シナ海などから地表付近に流れ込む多量の水蒸気が要因」とみている。水蒸気が流れ込みやすい地域は、6月には日本の南方、梅雨前線とともに徐々に北上し、7月上旬にかけて九州の南沖合周辺まで水蒸気が集中する地域が北上する。こうして、7月上旬には、とくに西日本を中心に、大雨になりやすい気象条件が重なる傾向があるという。

気象庁「特別警報・警報の発表状況(7月10日6時時点の資料)」より
気象庁「特別警報・警報の発表状況(7月10日6時時点の資料)」より

 気象庁では2020年12月に「線状降水帯予測精度向上ワーキンググループ(WG)」を発足させている。同WGは、線状降水帯の予測精度の向上を目的とし、今夏から水蒸気量の観測船を東シナ海などに派遣し、観測データをリアルタイムで収集する。また、アメダスの湿度計整備やスーパーコンピューター活用で予報精度を向上させる方針で、2022年の梅雨前をめどに、発生半日前の予報も始める予定としている。

 菅義偉(よしひで)首相は7月12日に静岡県熱海市の土石流災害の現場を視察後、「線状降水帯の発生を予測するための資機材だとか、あるいは開発、思いきって前倒しで進めたい」と語った。首相が具体的に線状降水帯の発生予報を後押しした以上、より精度の高い予報のために十分な予算が付けられることを期待したい。

気象庁:線状降水帯予測精度向上ワーキンググループ


▼《Bosai Plus》 No. 262/2021年07月15日号より(同P. 1(「もくじ」付き)へリンク

▼本紙全体をご覧になりたい方は こちらから お問い合わせください

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Google フォト

Google アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

%s と連携中