『DART:Planetary Defense』―NASAの地球防災

狙いを定めて、“ダーツ” 小惑星衝突から地球防災

DARTのミッション――人類と地球のために、
サイエンスフィクションをサイエンスファクトに変える

【 “超自然災害”としての小惑星、地球衝突 】

「DART」打上げの様子(Photo:NASA/Bill Ingalls)

● NASA、2022年9月に「“ダーツ”、命中」をめざして「DART」打上げ成功!

「DART」打上げの様子(Photo:NASA/Bill Ingalls)
「DART」打上げの様子(Photo:NASA/Bill Ingalls)

 米国航空宇宙局(NASA)は11月23日午後10時21分(現地時間)、地球に接近し衝突のおそれのある小惑星の軌道を変えるために、意図的に実験機を小惑星に衝突させる「DART」(Double Asteroid Redirection Test)計画の実験機打ち上げに成功した。DART機器を搭載したスペースXのロケット「ファルコン9」は、カリフォルニア州バンデンバーグ宇宙軍基地から打ち上げられ、その模様はNASAのテレビや公式サイトで生中継された。ロケットのブースターは帰還して地上に垂直着陸した。

 小惑星の軌道を変えさせる技術が試されるのは、同実験機が目的の場所に到達する2022年9月で、地球近傍天体「ディディモス」を周回する衛星「ディモーフォス」が衝突のターゲット。NASAが“地球防衛”の目的で本格的な実証実験を行うのは初めてとなる。

(Image Credit:Alex Alishevskikh)
(Image Credit:Alex Alishevskikh)
米国航空宇宙局(NASA)が、地球と木星の間を回る双子の小惑星をめざして、実験機「DART」を打ち上げた(上画像:NASA提供イメージ画像)。直径780mの小惑星を160mの小惑星が周回していて、2022年9月に地球から約1千万kmに接近する。そのタイミングで重さ約500kgの実験機を小さいほうにぶつけると、1周約12時間の公転周期が数分短くなるとみられる。衝突の影響により地球にぶつからない軌道まで動かすにはどれくらいの力が必要か、その変化を調べる予定だ。「DARTは、サイエンス・フィクションをサイエンスファクトに変える」とはNASAの弁
米国航空宇宙局(NASA)が、地球と木星の間を回る双子の小惑星をめざして、実験機「DART」を打ち上げた(上画像:NASA提供イメージ画像)。直径780mの小惑星を160mの小惑星が周回していて、2022年9月に地球から約1千万kmに接近する。そのタイミングで重さ約500kgの実験機を小さいほうにぶつけると、1周約12時間の公転周期が数分短くなるとみられる。衝突の影響により地球にぶつからない軌道まで動かすにはどれくらいの力が必要か、その変化を調べる予定だ。「DARTは、サイエンス・フィクションをサイエンスファクトに変える」とはNASAの弁

 ディディモスとディモーフォスは22年9月に、地球から約1100万kmの距離まで接近するが、このタイミングをとらえて、実験機を時速2万4140kmの速度でディモーフォスに衝突させる計画だ。ちなみに、ディモーフォス自体は地球衝突のおそれはなく、あくまで仮のターゲットとして、地球上の望遠鏡を使用して正確に測定する方法でその動きをわずかに変えることが目的。衝突の様子はイタリア宇宙局が提供する超小型人工衛星キューブサットで記録される。

 地球に近づく小惑星はこれまでに約2万7千個が見つかっていて、深刻な被害をもたらしかねない大きさ140m以上の「潜在的に危険」な監視対象も約2千個あるという。
 近い将来に衝突が迫っている判明事例はないが、プラネタリー・ディフェンス・カンファレンス(PDC/惑星(地球)防衛会議、後述)によれば、「99942アポフィス(Apophis)」と名づけられた直径340mの小惑星が、2029年4月13日(金曜日!)に、地球の上空3万1000kmの高度を通過すると予測され、実際に通過するところも見られる可能性が高いという。
 小惑星の軌道は木星や火星の重力で変わるほか、毎年新たに2500個以上が見つかっていることから、今後、衝突のリスクが高いものが見つかる可能性もある。

大気圏に突入した小惑星(Image Credit:Alex Alishevskikh)
大気圏に突入した小惑星(Image Credit:Alex Alishevskikh)

 いまから20年以上前の1998年公開の米国SFディザスター映画『アルマゲドン』は小惑星の接近で滅亡の危機に瀕した地球を救うべく、宇宙に飛び立ち小惑星に核爆弾を埋め込み、爆破しようという男たちの死闘を描いた。
 わが国でも2016年公開の新海誠監督のファンタジーアニメ映画『君の名は。』は、そのストーリーのクライマックスとなる小惑星落下が、専門家によればクレーターサイズなどが物理的にリーズナブルなサイズで、統計的に見ても、起こり得る小惑星の地球衝突現象だとされている。
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DARTのミッション――
サイエンスフィクションをサイエンスファクトに変える

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 本紙は2019年5月23日付けで、「自然災害の最悪想定、PDC ~ 映画ではない『地球防災』~」と題して、同年4月29日~5月3日に米国ワシントンDCで開催された「プラネタリー・ディフェンス・カンファレンス」(PDC:Planetary Defense Conference/惑星(地球)防衛会議)と呼ばれる国際会議の概要を紹介した。

《Bosai Plus》2019. 05. 15. No. 210:「自然災害の最悪想定『地球防災』」

 PDCは、天体(小惑星)の地球衝突がもたらす超巨大災害を人類共通の危機として対策を話し合うもので、2年に1回開催されている。2017年の第5回PDCは、欧米以外で初めて東京・日本科学未来館(東京都江東区)で開催され、JAXA宇宙科学研究所(JAXA/ISAS)、国立天文台(NAOJ)、日本スペースガード協会(JSGA)、日本惑星協会(TPSJ)といったわが国の主要研究機関が共催した。

 2019年にワシントンDCで行われたPDC模擬訓練では、シミュレーションで「2019PDC」と命名された小惑星が地球に衝突する可能性を、100分の1(この確率は、現実において対策行動が採られる確率とされる)とし、グループのリーダーたちが参加者たちに状況を報告、事実認定ミッションへの対処、小惑星の軌道をそらせる対策の可能性、地球への直撃が避けられない場合の被害の可能性の最小化方法などについて、アイデアやフィードバックを募った。この100分の1 の確率は、2日目には10分の1に急上昇する……というシナリオだった。

2019PDC資料より「Collision Course」シミュレーション。「50年間以内に1%以上」の確率で小惑星接近が確認された場合、米国政府への報告が義務づけられている(Image Credit:Alex Alishevskikh)
2019PDC資料より「Collision Course」シミュレーション。「50年間以内に1%以上」の確率で小惑星接近が確認された場合、米国政府への報告が義務づけられている(Image Credit:Alex Alishevskikh)
2017PDC資料より、「東京お台場がグラウンド零になった場合、直径3.8kmのクレータが形成され、直径42km圏内はトラス橋が崩壊する爆風、直径98km圏内の木造建築は爆風で倒壊、112km圏内の窓ガラスは吹き飛び、3700万人が被災する。今から10年間でこれだけの人間を退避させなくてはならない。被害想定ができているので、直接の死者数ゼロが設定目標となる」
2017PDC資料より、「東京お台場がグラウンド零になった場合、直径3.8kmのクレータが形成され、直径42km圏内はトラス橋が崩壊する爆風、直径98km圏内の木造建築は爆風で倒壊、112km圏内の窓ガラスは吹き飛び、3700万人が被災する。今から10年間でこれだけの人間を退避させなくてはならない。被害想定ができているので、直接の死者数ゼロが設定目標となる」

 自然災害の最悪想定は、巨大地震でも破局噴火でもカテゴリ6の暴風雨でもないのかもしれない。隕石、あるいは地球接近天体(地球近傍物体)の地球への衝突は、“超自然災害”だと言えるだろう。そしてそれこそが、かつて恐竜の大量絶滅を引き起こしたように、地球生物にとって最悪ともなり得る。しかも隕石の衝突はSFフィクションではなく、その証拠となる「巨大隕石の痕跡」がメキシコのユカタン半島に歴然として残っている。

 隕石の衝突は地球環境を急激に、一挙に激変させてしまうが、現代でもその危険がなくなったわけではない。地球に隕石や小惑星が衝突する可能性は、だれも否定できないばかりか、確実に“想定内”にある。しかもそれがやっかいなのは、「Collision Course(衝突進路)」は年単位で予測可能なことだ。
 もし、万が一、衝突不可避の小惑星が接近中となると、映画『アルマゲドン』や『ディープ・インパクト』のようなシナリオ、人間ドラマが現実となるわけだが、果たして。ちなみに、映画のように、接近する小惑星を爆弾やミサイルで粉々にすると、大量の破片が地球に降り注いで被害を拡大してしまい、現実的ではない、との見方もあるようだ。

 「DARTのミッションは、人類と地球のために、サイエンスフィクションをサイエンスファクトに変えること」とはNASAのプロジェクト責任者の弁である。

NASA:DART Planetary Defense


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