
▼《Bosai Plus》 No. 320/2023年12月15日号より(同P. 1(「もくじ」付き)へリンク)
●「トランス・サイエンス」おさらい
本号では巻頭企画「核のゴミ 地層処分」と「新刊『南海トラフ地震の真実』は真実?」(P. 3)で、たまたま「トランス・サイエンス」がキーワードになりました。以前も取り上げていますが、改めて「トランス・サイエンス」をおさらいしてみます。
「トランス・サイエンス」(trans-science)は米国の物理学者A・ワインバーグ博士が1972年に提唱した概念で、世の中には純粋に科学だけで解決できる問題と、一見科学的だが科学だけでは解決できない問題があり、現代ではむしろ後者のほうが多くなっていると考え、これをトランス・サイエンス問題と名づけました(接頭語“trans-”は「~を超える」の意味、「超科学」の訳も)。
博士は次のような例を挙げています(以下、隈本邦彦・江戸川大学教授による解説から引用)――
「原発の安全装置がすべて同時に故障すれば深刻な事態になることについて専門家の意見は一致する。サイエンス問題である。ところがそんなことがあり得るのか? という問いになると、それはトランス・サイエンス問題となる。確率がきわめて低いことは『科学によってわかる』が、ではそんな低い確率の危険に備えて、もうひとつ安全装置を追加すべきかどうかについては専門家の意見は分かれる。そこは『科学ではわからない』からだ……限られた科学的データをもとに社会が決めるべき問題なのである」
「ワインバーグ博士は、トランスサイエンス問題に対して科学者が取るべき態度として『どこまでが科学によって解明でき、どこからは解明できていないのか、その境界を明確にすることが科学者の第一の使命である』としている。つまり、『わからないことは、正直にわからないと言う』こと。『そんな想定はしなくていいと安易に言ってしまわないこと』と言い換えてもいい」――(以上引用)
もっとわかりやすく言えば、原発廃棄物の地層処理問題での「トランス・サイエンス」とは、例えば、平穏な暮らしを維持するために、私たちがどの程度のリスクなら受け入れるのかという科学者・研究者だけでは解決できない、私たちの問題だということでしょう。
これを社会的に解決するには、そのリスクの詳細(理学的情報)と被害想定(工学的情報)が整理・提示されることが必須条件ということになります。
つまり東日本大震災までは、理学・工学ともに、トランス・サイエンスの視点を欠いたことで「安全神話」が醸成されたと言えないでしょうか。
その意味でも、「10万年地層処分」の不確実性を踏まえた「リスク・コミュニケーション」の手段としては、10万年の展望から見れば一瞬に過ぎない現政権下での「結論ありき」のごり押しは、まずはいったん拒否して、みんなで熟議してみることが賢明ではないでしょうか。
●『南海トラフ地震の真実』は”いかにもいかにも”刺激的
『南海トラフ地震の真実』の広告宣伝文に、「南海トラフの発生確率は70~80%…数字を決めたのは科学ではなかった!……予算獲得のためにないがしろにされる科学――。地震学と行政・防災のいびつな関係を暴く渾身の調査報道」とあります。
トランス・サイエンスの視点からは、”いかにもいかにも”刺激的……といった印象なのですが(?)いかがでしょう。
(M. T. 記)

▼《Bosai Plus》 No. 319/2023年12月01日号より(同P. 1(「もくじ」付き)へリンク)
●「トランス・サイエンス」おさらい
本号では巻頭企画「核のゴミ 地層処分」と「新刊『南海トラフ地震の真実』は真実?」(P. 3)で、たまたま「トランス・サイエンス」がキーワードになりました。以前も取り上げていますが、改めて「トランス・サイエンス」をおさらいしてみます。
「トランス・サイエンス」(trans-science)は米国の物理学者A・ワインバーグ博士が1972年に提唱した概念で、世の中には純粋に科学だけで解決できる問題と、一見科学的だが科学だけでは解決できない問題があり、現代ではむしろ後者のほうが多くなっていると考え、これをトランス・サイエンス問題と名づけました(接頭語“trans-”は「~を超える」の意味、「超科学」の訳も)。
博士は次のような例を挙げています(以下、隈本邦彦・江戸川大学教授による解説から引用)――
「原発の安全装置がすべて同時に故障すれば深刻な事態になることについて専門家の意見は一致する。サイエンス問題である。ところがそんなことがあり得るのか? という問いになると、それはトランス・サイエンス問題となる。確率がきわめて低いことは『科学によってわかる』が、ではそんな低い確率の危険に備えて、もうひとつ安全装置を追加すべきかどうかについては専門家の意見は分かれる。そこは『科学ではわからない』からだ……限られた科学的データをもとに社会が決めるべき問題なのである」
「ワインバーグ博士は、トランスサイエンス問題に対して科学者が取るべき態度として『どこまでが科学によって解明でき、どこからは解明できていないのか、その境界を明確にすることが科学者の第一の使命である』としている。つまり、『わからないことは、正直にわからないと言う』こと。『そんな想定はしなくていいと安易に言ってしまわないこと』と言い換えてもいい」――(以上引用)
もっとわかりやすく言えば、原発廃棄物の地層処理問題での「トランス・サイエンス」とは、例えば、平穏な暮らしを維持するために、私たちがどの程度のリスクなら受け入れるのかという科学者・研究者だけでは解決できない、私たちの問題だということでしょう。
これを社会的に解決するには、そのリスクの詳細(理学的情報)と被害想定(工学的情報)が整理・提示されることが必須条件ということになります。
つまり東日本大震災までは、理学・工学ともに、トランス・サイエンスの視点を欠いたことで「安全神話」が醸成されたと言えないでしょうか。
その意味でも、「10万年地層処分」の不確実性を踏まえた「リスク・コミュニケーション」の手段としては、10万年の展望から見れば一瞬に過ぎない現政権下での「結論ありき」のごり押しは、まずはいったん拒否して、みんなで熟議してみることが賢明ではないでしょうか。
●『南海トラフ地震の真実』は”いかにもいかにも”刺激的
『南海トラフ地震の真実』の広告宣伝文に、「南海トラフの発生確率は70~80%…数字を決めたのは科学ではなかった!……予算獲得のためにないがしろにされる科学――。地震学と行政・防災のいびつな関係を暴く渾身の調査報道」とあります。
トランス・サイエンスの視点からは、”いかにもいかにも”刺激的……といった印象なのですが(?)いかがでしょう。
(M. T. 記)

▼《Bosai Plus》 No. 318/2023年11月15日号より(同P. 1(「もくじ」付き)へリンク)
●”目からうろこ”の「災害食」
本号巻頭企画は「災害食の事典/災害食ISO」です。
この両テーマは、日本災害食学会理事・副会長で日本防災士会副理事長、そして新潟大学大学院客員教授である別府 茂さんからの情報ご提供で可能となりました。
別府さんとは日本防災士会を通じて、また「災害食」取材などを通じて長いお付き合いをさせていただいています(本紙創刊時からの読者でもあります)。
本文で触れましたが、別府さんの「災害食」提唱に初めて触れたのは《Bosai Plus》創刊のさらに前、私が防災情報新聞記者として別府さんをインタビューした14年前になります。
本文でリンクを貼ったそのときのインタビュー記事「非常食が変わる――あたたかく役に立つ『災害食』とは」からうかがえるように、記者としての私はそれまでの非常食の概念を根底からくつがえす「災害食」の考え方に、まさに”目からうろこ”、目が醒める思いを味わったことを覚えています。
そして「災害食ISO」も然(しか)り。災害大国・日本発で世界各国の防災への取組みを後押しし、同時に災害食備蓄システムや災害食加工食品の標準化による海外版”地産地防”(本紙10月1日号/No. 315「巻頭企画」)にも展望が開けそうです。
防災メディアの編集記者として私は、このように刺激的な知見に触れることで”記事ネタ”を得て編集企画をひねり出してします。ありがたきは知己=知見、そしてご鞭撻――その宝庫こそ読者のみなさまと言い換え得るものです。
●忙中閑話
○朝日新聞の全面広告(バスクリン「髪姫」 23.11.06付け)のキャッチコピーに「だまされたと思って一度お試しください」というものがありました。これってあり?
○商品広告に小さく「個人の感想です」ってありますが、これ、メイン・キャッチコピーにしたほうがいい……
(M. T. 記)

▼《Bosai Plus》 No. 317/2023年11月01日号より(同P. 1(「もくじ」付き)へリンク)
●巻頭企画――”ステルス津波”とは言い得て妙?
伊豆諸島の鳥島近海で10月9日早朝に地震があり、千葉県から鹿児島県までの広い範囲で最大60cmの津波が観測されました。ただ、地震の規模が小さかったのに津波が広域で広がったことから、気象庁は「普通とは違う地震」と説明しました。
震源に最も近い地震観測所は300kmほど離れていて揺れはほぼ観測されなかったので、いわゆる震度零(ゼロ)の無感地震(地震計は感応)として分類されるのでしょうか。ただ、この海域では小さな地震による津波がたびたび観測されているそう。海底火山との関係も推測されていて、今後の研究・解明に期待したいと思います。
「ほとんどの人が気がつかない間に沿岸部に押し寄せる――その様は“ステルス津波”とも呼ぶべきか」と表現したのは週刊ポストでしたが、言い得て妙……でしょうか。
いずれにしても今回は幸い津波による大きな被害はなかったようですが、気象庁は「地震活動は当面継続すると考えられる」と注意を呼びかけています。警戒するとともに、今後の同様の現象、津波発生メカニズムの教訓とすべきでしょう。
●大地震発生に季節傾向はある?
巻頭企画で余談的に取り上げたNHKニュースの記事「災害は夜間と休日に多いってほんと?」と似たような素朴な疑問が、一般の方のブログ「地震は春・夏・秋・冬どの季節に多いのか調べてみた」にありました。
それによると、気象庁地震データベースで1923~2017年の94年間での震度6弱以上の地震を調べたところ全部で66件あり、 1年6カ月に1回は震度6弱が発生しているとのこと。
さて、どの月が多いか――月毎に多いのは3、4月(10回、12回、季節でいえば春!)7月(12回)。4番目は10月(8回)でそのほかの月は4、5回以下。有意とは言えないでしょうが、春が多かったとのこと。
アマチュア地震研究家も、ユニークな視点を提供してくれます。
yamasaakiのブログ:地震は春・夏・秋・冬どの季節に多いのか
●追加「ClipBoard」(本紙採録に間に合いませんでした)
朝日新聞:核のごみ処分地「日本に適地はない」 地質学者ら300人が声明公表
(2023.10.30.)
原発の使用済み核燃料から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の処分地選びをめぐり、地球科学の専門家有志が30日、「日本に適地はない」とする声明を公表した。地殻変動の激しい日本では、廃棄物を10万年にわたって地下に閉じ込められる場所を選ぶのは不可能と指摘。処分の抜本的な見直しを求めた……
(M. T. 記)

▼《Bosai Plus》 No. 316/2023年10月15日号より(同P. 1(「もくじ」付き)へリンク)
●「関東大震災100年」も押し詰まり……
日めくりカレンダーが日増しに薄くなったと感じる今日この頃。
スーパーマーケットではおせち料理の予約なども始まっているようです。
「関東大震災から100年」の今年も残り2カ月半となりました。本紙としては、年が明けたら「関東大震災から101年」と銘打って特別企画を続けたいと思っていますので、よろしくお願いいたします。
●自然災害の凄まじさに世界は驚愕した年――人間同士の争いは”異次元”
まだ本年の”まとめ”に入るのは早いのですが、世界は自然災害の脅威に驚愕した「年でも」ありました。「年でも」と言うのは、自然災害に劣らず、人間同士の飽くなき争いも同時進行しているからです。
防災で「犠牲者ゼロをめざす」本紙としては、人間同士の殺し合い、陣取り合戦、まちの破壊に胸がつぶれる思いです。
ロシアのウクライナ侵攻をはじめ、いま世界にはいろいろな紛争がありますが、その最たるものは目下急を告げるイスラエル・ハマス戦闘です。まさに”異次元”の殺戮の応酬としか言いようがありません。
BSテレビの「世界のドキュメンタリー」に「暴力の人類史」というタイトルがあり、そこで意外な見方を知りました。「今日、私たちは人類が地上に出現して以来、最も平和な時代に暮らしているかもしれない」(スティーブン・ピンカー)というものです。逆説ではなく、”なおもて”現代は平和だというのです。
イスラエル・ハマス戦闘に(不謹慎ではありますが)、かつて読んだ筒井康隆の短編「毟(むし)りあい」を想起しました。いかにも筒井康隆の世界ではありますが……(現実の人の殺し合いを前にやはり不謹慎、以下、ノーコメントとします)
●忙中閑話
日本経済新聞:中年Z世代「あえて酔わず」 30年後、ビール市場が半減
(2023.10.01.)
「とりあえずビール」と、全員がジョッキで乾杯する宴会も今は昔。若者の間で「あえてお酒を飲まない」価値観が広がりつつある。ビール市場は2050年代に現在から半減し、ピークの10分の1に縮小する可能性が……
(M. T. 記)

▼《Bosai Plus》 No. 315/2023年10月01日号より(同P. 1(「もくじ」付き)へリンク)
●地域創生・振興と防災の二兎を追う「地産地防」 二兎を得るには……
巻頭企画は「地産地防」――地産地消の”もじり”です。
本文で紹介しましたが、「地産地防」は「地域の産業で地域の防災を進める」という意味。つまり政策的には、地域創生・振興と防災の二兎を追う趣旨もあります。
”二兎を追う者は一兎をも得ず”とも言いますが、岸田内閣のもとで2021年に構想された「デジタル田園都市国家構想」は「地産地防」とも連動し、「デジタル技術による地域活性化を進め、さらには地方から国全体へボトムアップの成長を実現する」というもの。
「デジタル田園都市国家構想関連施策の全体像」という資料によれば、①デジタル基盤の整備、②デジタル人材の育成・確保、③地方の課題を解決するためのデジタル実装、④誰一人取り残されないための取組みという軸が示されていて、二兎どころではありません。
政治のスローガンはかように、田園都市という牧歌的なイメージにデジタルという先端技術を組み合わせて「Win-Win」、「三方よし」どころではなく、「八方美人」(どこから見ても欠点のない美人⇔転じて、だれからもよく見られたいと愛想よくふるまうこと。また、そのようにふるまう人)に通じますので、要警戒(?)。
とは言え、地域の防災力向上にこれからの時代、デジタル技術、IoTは欠かせません。ただし、わが国はDX(デジタル・トランスフォーメーション)において先進諸国と比べると何周遅れとも言われていますので、課題は山積でしょう。
しかもその課題は、DXを進めたいという為政者自身の資質・体質・旧弊に根差しているとしか思えないのは、小紙だけでしょうか。
停滞を突破する”ブレイクスルー(breakthrough)”は、為政者自身の自己変革から、ということでは?(がんばれ! ニッポンDX化)
●忙中憂話
CNN:米NY市に記録的大雨、街路や地下鉄で洪水発生 命脅かす事態
(2023.09.30.)
米ニューヨーク市が29日、記録的な大雨による洪水に見舞われ下水管で処理しきれなくなった水が街路や地下鉄、学校などに押し寄せる事態となった。路上の車両も水に漬かるなど、全米最大の人口を抱える都市が混乱に……
CNN:2億5000万年後の地球、新たな「超大陸」は人類の住めない世界か 新研究が示唆
(2023.09.27.)
今から約2億5000万年後、新たな「超大陸」の形成に伴って人類をはじめとする哺乳類は地球上から姿を消す可能性がある。研究者らがこのほど、そのような予測を発表した……
(M. T. 記)

▼《Bosai Plus》 No. 314/2023年09月15日号より(同P. 1(「もくじ」付き)へリンク)
●北アフリカの大地震と大洪水の同時発生
本号巻頭企画は、わが国での言わば”通常災害”(大規模災害に対して)である台風・大雨被害を取り上げましたが、【話題1】では北アフリカのモロッコとリビアでほぼ同時期に発生した大地震と大洪水を取り上げました。それぞれ死者は4千人、9千人とも言われ、世界を驚愕させています。
ひるがえって東日本大震災での死者・行方不明者数は関連死も含めば2万2千人を超えています。この人的被害は明治以降の日本の地震被害としては関東大震災、明治三陸地震に次ぐ3番目の規模の被害とのことで、改めてわが国の自然災害の脅威に震撼させられます。
本号「ClipBoard」で取り上げていますが、自然災害のリスク評価を行う米国ムーディーズRMSは、関東大震災級の首都直下地震が発生した場合、経済損失が48兆5000億円にのぼると試算。これは東日本大震災の被害額の約3倍に相当するとのことです。
時事通信:経済損失48.5兆円 首都直下地震で―ムーディーズ試算
(2023.09.04.)
5年前の2018年6月、土木学会が「『国難』をもたらす巨大災害対策についての技術検討報告書」を公表、南海トラフ巨大地震や首都直下地震が起これば「長期経済被害被害により”最貧国化”を否めない、対策に一刻の猶予も許されない」とし、大きな反響を呼びました。
防災プラス:「国難⇒最貧国化」の衝撃 巨大災害の被害推計
(2018.06.15.)
モロッコ地震もリビア洪水も人災的要因が大きいようですが、災害で失われる命があってはならない――言い換えれば、地震そのもので人は死なない、建物・構造物の倒壊で命が失われます。
洪水や津波で人は死なない、大雨や津波で浸水する土地に居住することで命が危うくなる――目先(私たちの時代)の利益のためにではなく、後世(子々孫々の時代)の安心・安全のために、災害対策・防災は根源的に見直す必要があるのではないでしょうか。
「災害犠牲者ゼロ」をめざす本紙としてはまさに「 ゴールは遠いが、しっかり見える。」、”災害資本主義”(災害は資本主義の内から必然的に生じてくるという説)からの脱却を、愚直・頑固一徹にめざしたいと思います。
●忙中閑話
エフエム愛媛:防災ラジオ付きの自動販売機 愛媛県に四国 1号機設置!
(2023.09.14.)
株式会社エフエム愛媛では、緊急地震速報を音声で知らせる自動販売機の設置に取り組んでいます。9月14日、愛媛県東温市の「フジ志津川店」に四国1号機となる防災ラジオ付き自動販売機が設置されました。これは緊急時にエフエム愛媛が放送する 「緊急地震速報」を、街中にある自動販売機を通じて、街行く人々にお届けすることができる、防災支援サービスです……
(M. T. 記)

▼《Bosai Plus》 No. 313/2023年09月01日号より(同P. 1(「もくじ」付き)へリンク)
●”お蔭様で”(心底からの感謝!)本紙は本号で創刊13年
本号9月1日号(No. 313)で、本紙は創刊13年となります。
読者のみなさまのご愛読・ご支援に心より感謝申し上げます。
今後とも末永くよろしくお願い申し上げます。
●関東大震災から100年 首都直下、南海トラフ対策の原点に
本号は特別構成として、9月1日「防災の日」=関東大震災100年ということで、防災の原点に立ち返ってこの大震災での「災害ボランティア」の”嚆矢”(こうし=はじまり)としての「学生救護団」を取り上げました。
本紙提携紙であるWEB防災情報新聞には「周年災害」というわが国の災害史の総まとめとも言うべき膨大な資料が掲載されています(ライフワークとして執筆とりまとめにあたっている山田征男氏に多謝!)。
WEB防災情報新聞「周年災害」では「関東大震災100年。特集/「周年災害」がひも解く大震災と防災」と題して、膨大な資料とともに大震災のさまざまな姿(側面)を取り上げていますので、ぜひご一読ください。本紙はその一部引用のかたちで本号巻頭記事を構成しました。
●東京帝国大学「学生救護団」とJVOAD
関東大震災で東京帝国大学学生救護団は、単なるボランティアの枠を超えて、支援者の善意と被災者のニーズを結びつけ、災害支援全体を指導する役割を担っていたようです。
本号では、『帝國大學新聞』の「永久に記憶さるべき東大学生の大活動」(見出しの旧字体を新字体に改め)と題した記事のカット写真を掲載しましたが、現代の東大新聞が、その役割は現代の「全国災害ボランティア支援団体ネットワーク(JVOAD)」にも引き継がれていると言及しています。ご参考まで。
●忙中閑話
READYFOR:「女性用 立ち小便 補助具」で災害時の女性のトイレ問題を解決したい(女性防災士/看護師/保健師によるクラウドファンディング)
(2023.08.30.)
多くの女性のために、大切な奥様や彼女のために、大切な娘さんのために、大切なお母様のために、トイレを我慢することで起こる健康問題を引き起こさないために、「女性用 立ち小便 補助具」にご支援を……
●本紙前号掲載「関東大震災 100年前の100人の新証言」の記事削除について
経緯は本号P. 6「Bosai+Notice」をご覧ください。掲載要請に応えて掲載した記事について、情報提供元から「削除要請」があったという”想定外”でした。
読者におかれましても、諸般ご斟酌のほどをお願いいたします。
【 訂正とお詫び 】
本紙2023年7月1日発行(No. 309/P.5)「2023年 防災士功労賞を表彰」記事内のカット写真説明に間違いがありました。正しくは「賞状を受ける 上:団体受賞の日本防災士会京都府支部(田中英樹氏)、下:太田貴代子氏(愛知県)」となります。読者および関係者に深くお詫びして訂正いたします。
(M. T. 記)

▼《Bosai Plus》 No. 312/2023年08月15日号より(同P. 1(「もくじ」付き)へリンク)
●関東大震災から100年の災害教訓を”バックドア=変化球”で
バックドアなどというマイナーな語句を巻頭見出しにしたこと、お詫びいたします。バックドアとは、ここでは野球用語、とくにMLB(メジャーリーグ)で出てくるピッチャーの変化球で、ボールのように見えて手元でストライクゾーンに入ってくる変化球のことを言います(反対語はフロントドアで、ストライクのように見えて外側、あるいは内側のボールゾーンにそれていくボール)。
要するに、正統派の災害教訓であれば、災害・防災専門家による大震災の分析・評価・論考は”直球=ストレート”ですが、それらとはひと味異なり、地震という圧倒的な自然の不条理に遭遇した生身の人間の恐怖体験を生々しく取り上げようという趣旨で、前号に続いて本号は”バックドア教訓”の第2弾ということになります。
それというのも、前号の発行と前後して、日本赤十字社東京都支部の生成AIによる『関東大震災 100年前の100人の新証言』公表、続けて西日本出版社の『一高生が見た関東大震災 100年目に読む現代語版 大震の日』と『写真集 関東大震災 被害→避難→救援→慰霊→復興』2冊の刊行情報、さらに劇映画『福田村事件』の全国公開情報などが続けて着信。
これら関東大震災100年企画はまさに、これまでの”直球勝負”とは一味異なる新手の災害教訓の試みだと確信しました。
次号はいよいよ関東大震災100年の9月1日号で本紙創刊記念日号ともなります。「関東大震災から100年」の総括としたいところですが、本紙なりの切り口を模索中ですので、あまり期待なさらないでお待ちください。
●マウイ島山火事、日本で学ぶべき災害教訓は
マウイ島での山火事は、ハワイ州史上最悪の自然災害と言われています。この火災によって多くの人命や財産が失われ、歴史的な町も壊滅的な被害を受けました。自然環境への影響も甚大なものになるでしょう。
ひるがえって、日本でも森林火災は年に約1000件発生しており、気候変動や地球温暖化の影響で自然発火が起こりやすくなっていると言われます。
日本の災害史で「大火」と呼ばれる火災は、主に江戸時代から明治時代にかけて発生した都市部での大規模な火災がありましたが、近年は、1976(昭和51)年10月29日に山形県酒田市で発生した大火以降は、大きな大火は発生していません(阪神・淡路大震災での神戸市の同時多発火災を除く)。
しかし例えば、もともと酒田市周辺は立地的に日本海から内陸部への風の通り道であることなど、温暖化を背景に強風・乾燥などの悪条件が重なると大火を招く要因を有する地域は少なくないと思われます。
マウイ島の大火を対岸の火事とすることは、決してできません。
●忙中閑話
朝日新聞:(天声人語)熱波に名前は必要か
(2023.08.12.)
今年の夏も日本に限らず、世界中が酷暑にあえいでいる。水分摂取や外出自粛を呼びかけても、熱中症などで命を落とす人が後を絶たない。この危険な暑さに対する市民の意識を高めようと、欧米などで熱波に名前を付けようという動きがあるそうだ……
(M. T. 記)

▼《Bosai Plus》 No. 311/2023年08月01日号より(同P. 1(「もくじ」付き)へリンク)
●「大正関東地震」の揺れを”読む”
関東大震災100年もいよいよ佳境、9月1日「防災の日」も近づきました(本紙創刊日でもあります)。
本号巻頭企画は、関東大震災(大正関東地震)の揺れを”読む”というもの。
今日、私たちは起震車でその揺れを物理的には体験できますが、それはあくまで”安全を確保したうえでの”疑似体験なのでリアリティに欠けます。
そこで揺れを”読む”――当時の揺れを体験した著名人の”リアルな揺れのさなかの体験記”を読むことで、関東大地震の迫真の追体験ができるのではないか、というのが趣旨です。
●関東大震災と渋沢栄一
2024年から使用される新1万円札の顔・渋沢栄一が改めて注目されるところですが、関東大震災について渋沢は、「震災は腐敗した人間社会を懲らしめるための天罰だ」とする天譴(てんけん)論を語っています。
これに対して、小説家・劇作家で実業家としても文藝春秋社を興し、芥川賞、直木賞、菊池寛賞の創設に携わった菊池寛は「地震が渋沢栄一氏の云ふ如く天譴だと云ふのなら、やられてもいゝ人間が、いくらも生き延びてゐるではないか。渋沢さんなども……自分の生き残つてゐることを考へて、天譴だなどゝは思へないだらう」と鋭い皮肉を放ったそうです。
実業家・渋沢栄一が天譴説を唱えたのに対し、ジャーナリスト文士・菊池寛が「天譴ならば栄一その人が生存するはずはない」と喝破したのは、時代を超えて”いいね!”を集めたことと思われます。
もっとも渋沢は、地震発生時は日本橋兜町にあった渋沢事務所にいて、事務所の倒壊は免れましたがあわやのところを助けられ、周辺が火災延焼のなか王子にある家までやっと避難できたようで、よくぞ無事で……という状況だったそう。
そして渋沢はすぐさま被災者の救助や支援に乗り出します。内務大臣後藤新平からの要請も受けて被災者支援活動に尽力、義捐金の募集・配分をはじめ政府の帝都復興審議会にも加わり、復興計画にも参画していきます。
●関東大震災と牧野富太郎
本年4月15日号(No. 304)配信時の本欄で、メルマガ「今週の防災格言」を発行する「思則有備」の記事から「牧野富太郎と寺田寅彦の”ご縁”」を紹介しました。再掲すると――
NHKテレビの連続テレビ小説「らんまん」の主人公・槙野万太郎のモデルとなった牧野富太郎博士は近代植物学の権威として知られますが、若い頃には植物学のほかに地理、天文や物理学などの西洋科学を学んでおり、地震火山といった天変地異にも大いに興味を持っていたとのこと。
そして大正12年(1923年)、61歳となった富太郎は渋谷の自宅で関東大震災に遭遇し、「私はこれに驚くよりもこれを心ゆくまで味ったといった方がよい」という感想を自叙伝に書いているそうです。
また、土佐(高知県)出身で同郷だった寺田寅彦(物理学者、地震学者)の記念館(寺田寅彦邸)の石垣には「天災は忘れられたる頃来る」と彫られた石碑が埋められているそうですが、「この字は牧野富太郎の筆によるという」のもおもしろい逸話で、改めて牧野富太郎博士に、そして”見流していた”朝ドラ「らんまん」に興味を持った次第です。
これらの逸話、詳しくは――
「今週の防災格言」(2023.04.10.):関東大震災を体験した牧野富太郎の名言『 もう一度大地震に逢ひたい 』
(M. T. 記)

▼《Bosai Plus》 No. 310/2023年07月15日号より(同P. 1(「もくじ」付き)へリンク)
●地球規模の「大災害時代」?
(本日)7月15日から16日にかけて東北地方で警報級の大雨が降る恐れがあるとして、気象庁は土砂災害や河川の氾濫に警戒するよう呼びかけています(15日午前2時現在)。これまでの雨で地盤が緩んでいるところもある北陸地方も、15日朝にかけて土砂災害に警戒が必要だそうです。
この6月末から7月上旬・中旬にかけて梅雨前線、線状降水帯による大雨災害が九州・中国・北陸・東海地方にかけて各地で発生しています。
関東地方では雷雨・突風被害も発生、いっぽう、東京都八王子市で12日に最高気温39.1℃を観測、10日に山梨県大月市で観測された38.7℃を上回り、今年全国で最も高い気温を更新したとのこと。
そして直近の気象情報では、3連休の最終日17日(月)は東京都心で38℃の予報。体温を超える気温はまさに”災害級の暑さ”で、熱中症厳重警戒です。
このような「異常気象」あるいは「極端気象」は、言うまでもなく地球温暖化への身近な警鐘となるものでしょう。
身近ではないが、ひしひしと迫る不気味な怖さの意味での警鐘は、北極や南極の氷やヒマラヤの氷河が融け始めているという話題でした。ところがここに来て、「エルニーニョ」(その反対語の「ラニーニャ」)という言葉も急速に聞かれるようになってきました。
本号では、まさに”ひしひしと迫る不気味な怖さ”を秘めた「エルニーニョ現象」のおさらいを試みました。
エルニーニョもラニーニャも、スペイン語の語意は「神の子」「女の子」で怖いイメージはなく、むしろ愛しい響きがあります。もともと「エルニーニョ」という用語は、クリスマス時期にペルーとエクアドルの沿岸を南に流れる小規模な暖かい海流を指すものだったようです。
しかし、地球温暖化とともにこの用語は進化し、現在では海面の温暖化を指すものとなったようです。
直近の話題に「人新世(じんしんせい/ひとしんせい)」もあります。人類の爪痕が残る時代、あるいは人類による「第6の大量絶滅」を地球の歴史に刻む新たな地質年代となるのか――現代の空気感とともに、暗澹たる思いもあります。
(M. T. 記)

▼《Bosai Plus》 No. 309/2023年07月01日号より(同P. 1(「もくじ」付き)へリンク)
●防災白書〈特集〉20年と、防災士制度20年
本号巻頭企画は「防災白書」―ー2023(令和5)年版をメインにしましたが、その〈特集1〉が「関東大震災100年」、防災白書が1963年に刊行されてから60年(”還暦”)もからめて、これまでの防災白書「特集」一覧を紹介してみました。
この特集とキャッチフレーズ一覧は、まとめてみると直近20年の暦年の、そのときどきの防災課題の変遷がよくわかります。
想定巨大地震への備えから災害リスクの認識、自助・共助の大切さ、新しい公共としての防災――そして、2010(平成22)年版で初めて、小さいコラムでしたが、防災士が初めて白書で紹介されました。
防災士制度推進の当事者であった私たちは当時、「やった~!」という感じだったことは否めません。
というのも、防災士第1号が誕生したのが2003年10月ですから、こじつけかもしれませんが、2004年から始まった防災白書の「防災メッセージ」の歩みとほぼ軌を一にしていたとも言えます。
そして、東日本大震災の勃発で、防災白書の特集は”キャッチフレーズ”をやめてストレートに「特集」を打ち出すことになりますが、防災士制度においてもまた、東日本大震災で再び(阪神・淡路大震災に続いて)あらわになった公助の限界を乗り越えるべく、パラダイムシフト転換が促されました。
そのパラダイムシフトとは、公的資金を投入して住民に民間資格である防災士になってもらう――国・地方自治体は「自助・共助・協働」をモットーとする防災士の役割を高く評価し、自治体自らが防災士養成事業に次つぎと名乗りをあげ始めた――まさに、パラダイムシフトです。
本号では防災士功労賞の表彰も取り上げています(P. 5)。総務省消防庁長官、内閣府統括官(防災担当)が来賓として出席、防災士への期待を述べられましたが、両氏の言葉の端々に、まことに率直な防災士への期待が込められていたように感じました。
●耳寄り情報
BBC:フランスで異例のM5超の地震 数百の建物が破損
(2023.06.18.)
フランス西部で16日夜から17日朝にかけて地震が相次ぎ多くの建物が破損した。フランスで強い地震が起きるのは異例。北西レンヌから南西ボルドーまで揺れが感じられた。16日夜の地震の規模はM5.8……
(M. T. 記)

▼《Bosai Plus》 No. 308/2023年06月15日号より(同P. 1(「もくじ」付き)へリンク)
●「わがまちの災害リスク」を超えて「わが国の少子高齢化リスク」に抗う
本号巻頭企画は「わがまちの災害リスク――空き家、老朽化マンション」問題を取り上げました。少子高齢化、人口減のリアルな現実がここに浮き彫りにされています。
この問題は地域防災にとって当然大きな課題になりますが、それ以上に、わが国の近い将来の命運を暗示する深刻な状況でもあります。
最近のニュースに、2022年に生まれた日本人のこども(出生数)は77万747人で、統計を始めた1899年以降で最少、初めて80万人台を割り込んだというものがあります。
1人の女性が生涯に産む見込みの子どもの数を示す「合計特殊出生率」が1.26に落ち込み、データのある1947(昭和22)年以降では2005(平成17)年と並んで過去最低の水準で、少子化の加速が止まらない状況のようです。
政府によると合計特殊出生率は2.07が必要とのこと。現状は、世界的に見ても日本は212位中194位(世界銀行発表データ)で、日本の合計特殊出生率は極めて低いようです。
このままのペースで少子化が進めば労働力不足はより深刻化し、遠からず社会保障制度が行き詰まることはもちろん、わが国の経済規模縮小も避けられず(G7からの脱落)、いずれ国家財政の維持すら厳しくなることは避けられないとの予測もあります。
いま政府は”異次元の少子化対策(出産・子育てへの資金援助)”でなんとかこの少子化を食い止めようとしていますが、果たして多くの国民はその深刻さを理解しているのでしょうか――
政府のこれまでの不作為を責めるだけでは、国民自らの(そして次世代の)近い将来の”貧困化”を招くだけではないでしょうか。
少子高齢化・人口減という国難の解決策は簡単には見つからないと思います。がしかし、小手先の若い人の支援ではなく、多くの国民が共に、日本という国の将来に夢と誇りを持てる「理念」を、時の政権は打ち出すべきではないのか。
例えば、より平和志向・より人権志向・より多様性志向の理念を打ち出した新しい日本――それに向かって若い人たち、子どもたちが、夢と誇りをもって世界に胸を張り、生きる歓びを享受する――身の丈に合った、そういう理念づくりがいまこそ必要な気がしています。
今回の巻頭企画をまとめながら、防災を超えて、そういう”勇み足”的な夢を見ました……
(M. T. 記)

▼《Bosai Plus》 No. 307/2023年06月01日号より(同P. 1(「もくじ」付き)へリンク)
●日本海溝・千島海溝の”過酷被害想定”に備えて
本号巻頭企画は、中央防災会議幹事会がとりまとめた「日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震における具体的な応急対策活動に関する計画」を取り上げました。
これまで本紙も何度か取り上げてきた巨大地震津波による過酷な被害想定を踏まえてのことですので、十分な事前計画づくりは当然だと思います。
この「プッシュ型支援」計画にはぜひ、国としての防災・減災の「志=魂」を反映してほしいものだと思っています。
●原発「60年超」運転が事実上可能に
いっぽう、参院経済産業委員会で5月30日、既存原発の「60年超」運転を事実上可能とする「GX(グリーントランスフォーメーション)脱炭素電源法」が可決され、31日の参院本会議で可決・成立しました。
これに先立って岸田文雄首相は原発の活用について、「安全神話に陥らず、リスク低減の活動に規制当局と事業者が継続的に取り組むことが重要だ」と述べたそうです。
岸田さんの口ぐせで、「え~っと……」と合いの手を入れながらの発言だったかどうか知りませんが(おちょくってすみません)、あえて本紙に言わせれば、言葉はかようにも重そうで軽いものかと……
たまたま北朝鮮が本紙校了日(関係ありませんが)の31日朝に打ち上げた「衛星」が墜落したようですが、その前日、中国の有人宇宙船打ち上げは成功したようです。
それぞれ、国の威信をかけての”賭け”のようですが、ひと月ほど前のわが国のH3ロケットは残念ながら打ち上げ失敗でした。
H3ロケットは国の威信を賭けたわけではないでしょうが、JAXAはじめ関係者は忸怩たる思いではあるのでしょう。
科学技術は”正直”で、人は失敗しないはずと思いこんでいても、ちゃんと失敗の原因があって失敗するわけです――ですから、原発を推進する向きが原発の経済性や技術的安全性を強調しすぎなのが、逆に怖い。
地殻変動帯にあるわが国の自然災害リスクはもとより、テロ、技術的な瑕疵(かし)、人為ミスなどが引き起こす「国の存亡にかかわるリスク」、そして「子々孫々にまで影響をもたらす廃棄物処理」などは目先の電力安定供給、経済性、技術的安全性などとはまったく別ステージで熟議すべきテーマのはずです。
改めて、首相の「安全神話に陥らず、リスク低減の活動に規制当局と事業者が継続的に取り組むことが重要だ」という”決め台詞”に、首相自身が安全神話に陥っているのではと、不安が募る次第です。
(M. T. 記)

▼《Bosai Plus》 No. 306/2023年05月15日号より(同P. 1(「もくじ」付き)へリンク)
●「関東大震災から100年」、マジに再来を警戒……
5月5日の能登半島の震度6強・5弱の連続地震、群発地震、そして同11日の千葉県南部の地震、さらに本紙校了日を急き立てるように11日あたりから続くトカラ列島近海での群発地震……そしてもう本紙の原稿締切り(14日夜)という段になっての八丈島近海での連続地震速報……
トカラも八丈島もいずれも海域で起こった地震ですが、幸い津波は伴っていません。しかし、海域で起こる地震では地震の揺れと同時に津波の発生が心配です。
たまたま校了準備をしているさなかの14日23時03分ごろと日付けが変わって15日01時22分ごろ、八丈島近海で再びそれぞれM5.2、M4.2の地震発生情報があり、筆者のパソコンの緊急地震速報(予報)が鳴りました(東京の予測震度はそれぞれ1/数値は防災科研「防災地震Web」より)。
このところ群発とまでは言わずとも、一定地域で連続して発生する地震が多いような気がします。巨大地震の発生確率はあくまで確率ですが、発生回数が増えれば増えるほど、巨大地震に”当たる”確率は高くなるのでしょう。
とすると……千葉県南部の地震関連で気象庁資料を調べたら、相模トラフで想定される巨大地震がこの周辺で起こることが付帯説明としてありました(今回の地震と関連づけるわけではなく)。
相模トラフの巨大地震と言えば、1923年大正関東地震=関東大震災が反射的に頭に浮かびます。「関東大震災から100年」、マジ、再来警戒です。
●昨年3月福島県沖の地震の「デジャヴ」または「パラレルワールド」?
本文でも書きましたが、東日本大震災から11年の周年を経た昨年3月16日夜の福島県沖の地震(M7.3)はまさに、最悪想定(東日本大震災の再来)も有り得べき悪夢のような地震でした。
ほぼ1年後のいま、似たような状況が日本列島を”包囲”しています。それは「デジャヴ(既視感)」にも似て、「パラレルワールド(並行世界)」にも似た感覚です。
そしてそれらの感覚は、警鐘と受けとめるべきもののように思えます……
(M. T. 記)

▼《Bosai Plus》 No. 305/2023年05月01日号より(同P. 1(「もくじ」付き)へリンク)
●5月は「水防月間(北海道は6月)」 今年こそ「防げたはずの死」をゼロに……
本紙は前号4月15日号(No. 304/P. 3の囲み記事)で、関西大学社会安全学部とイギリスのレスター大学、「回避可能な死のネットワーク(Avoidable Deaths Network)」(ADN)が提唱する「回避可能な死の国際啓発デー」の大阪府泉大津市での立ち上げイベントを紹介しました。
同イベントは「3月12日」を「回避可能な死の国際啓発デー」として、「防げたはずの死」の減少方策を考える機会を提供しようという趣旨です。
開催地の泉大津市は、南海トラフ巨大地震津波による犠牲者が「避難意識が低い場合には約2000人と想定されるいっぽう、避難意識が高い場合は誰一人犠牲にならないと想定されています。
この2000人という犠牲者はまさに「回避可能な死」であり、その数を減少するための取組み・検討を行おうというイベントでした。
関西大学:「回避可能な死の国際啓発デー」を開催
本紙のスローガンである「災害犠牲者ゼロをめざす」は、正直言って”理想”ですが、とは言え「回避可能な」災害犠牲者という条件設定は大変興味深いテーマです。
本号巻頭企画の流域治水(水害)の「自分ごと化」はまさに、毎年繰り返される水害リスクの回避=回避可能な災害死ゼロに向けて、重要なヒントとなるものでしょう。
「3月12日~回避可能な死の国際啓発デー」については今後もフォローしていきたいと思っています。
●ハザードマップのユニバーサルデザイン化と「チャットGPT」
「ハザードマップのユニバーサルデザイン化」は焦眉の課題です。本紙で取り上げた検討会の報告書は、いろいろな試行錯誤も含めて、その開発は開発途上のようです。
検討会は本年3月でいったん報告をまとめましたが、その直前に、驚くべきデジタル技術がほぼ一夜にして爆発的に世界中を席巻しています。「チャットGPT(ChatGPT)」です。
オープンAI(OpenAI)が昨年12月に公開したチャットボット「チャットGPT(ChatGPT)」は、サービス開始からわずか2カ月後の2023年1月にユーザー数が世界で1億人に到達。史上最も急速に成長しているインターネット・サービスだという推定もあるようです。
すでにこれを日本語で試してみた人も多いと思います。筆者も試してみてその”実力”に驚きましたが、筆者はいまのところこの技術は「Wikipedia」の”高度化”という印象で、報道メディアとしては「Wikipedia」の情報を全福信頼できないように、「チャットGPT」の回答にも”裏取り”(ファクトチェック)が欠かせない、本紙の編集方針・企画は独自のもの(オリジナリティ)を堅持したいと思っています。
検討会がこの技術を想定に入れたかどうかはわかりませんが、おそらく「ハザードマップのユニバーサルデザイン化」においても、いえ、防災の各種情報サービスのあり方の議論においても、今後、大きな可能性は秘めていると思います。
あえて英語の慣用句で言うと、「We’ll see.」(成り行きを見守りましょう)というところでしょうか。
(M. T. 記)

▼《Bosai Plus》 No. 304/2023年04月15日号より(同P. 1(「もくじ」付き)へリンク)
●災害ゴミ対応は家庭ゴミ・分別対策から
本号巻頭企画は「災害ゴミ」です。
先ごろ、環境省が公表した日本海溝・千島海溝沿い巨大地震想定での災害ゴミ発生量推計と南海トラフ巨大地震、首都直下地震でのそれとあわせて、国・自治体の対応・対策を概観し、とくに地域防災とかかわる私たちが考えるべきことを考えてみました。
膨大な災害ゴミ処理対策も、詰まるところ、事前防災としての防災まちづくりに立ち返ってきます。そしてその一環として、地区防災計画も防災タイムラインも事業継続計画(BCP)も、災害ゴミ対応にも応用できるというもの。
いろいろやること、なすべき課題は多いのですが、それだけやりがいもあるという前向きな姿勢で来たるべき災害――そしてわが家の家庭ごみ分別対策に――備えることにしましょう。
●牧野富太郎と寺田寅彦の”ご縁”
以前紹介させていただきましたが「思則有備」のメルマガ「今週の防災格言」に興味深い記事がありました。
NHKテレビの連続テレビ小説「らんまん」の主人公・槙野万太郎のモデルとなった牧野富太郎博士は近代植物学の権威として知られますが、若い頃には植物学のほかに地理、天文や物理学などの西洋科学を学んでおり、地震火山といった天変地異にも大いに興味を持っていたとのこと。
そして大正12年(1923年)、61歳となった富太郎は渋谷の自宅で関東大震災に遭遇し、「私はこれに驚くよりもこれを心ゆくまで味ったといった方がよい」という感想を自叙伝に書いているそうです。
また、土佐(高知県)出身で同郷だった寺田寅彦(物理学者、地震学者)の記念館(寺田寅彦邸)の石垣には「天災は忘れられたる頃来る」と彫られた石碑が埋められているそうですが、「この字は牧野富太郎の筆によるという」のもおもしろい逸話で、改めて牧野富太郎博士に、そして”見流していた”朝ドラ「らんまん」に興味を持った次第です。
これらの逸話、詳しくは――
「今週の防災格言」(2023.04.10.):関東大震災を体験した牧野富太郎の名言『 もう一度大地震に逢ひたい 』
●忙中閑話
建設通信新聞:リニアモーターで動く自走式エレベーター 3次元移動が高層建築を変える リニアリティー
(2023.03.01)
次世代エレベーターが高層建築を変える――ベンチャー企業のリニアリティー(京都市、マルコン・シャンドル社長)は、ロープを使わずリニアモーターで直接駆動する自走式エレベーターの開発を進めている。軌道を垂直方向に限定せず、横、斜め、曲線とあらゆる方向に自由に移動できるのが特長……
(M. T. 記)

▼《Bosai Plus》 No. 303/2023年04月01日号より(同P. 1(「もくじ」付き)へリンク)
●究極の津波防災は「津波が及ばない高所に住むこと」
本号では、巻頭企画で「防集」(防災集団移転促進事業)を取り上げました。
本文で書きましたが、「究極の津波防災は本来、冷徹なまでにアナログで「津波が及ばない高所に住むこと」ではないでしょうか。
古来、神社・仏閣などは沿岸部ではなく、高台や森の中に建てられていることが多いわけですが、まさに災害(地震、津波、洪水など)の多いわが国で、低頻度大災害から経験的に得られた先人の知恵でしょう。
しかし、人間の性(さが)でしょうか、現世のなりわい(生計)を優先する私たち”庶民”は利便性の高い平地、沿岸部でまちづくりをしてきました。
大災害は低頻度で起こりますから、あえて災害リスクの高い場所で住み続けるのであれば、災害被害はその土地に住む代償とも考えられ、被災住宅の公的資金による再建支援は、それが危険な地区での居住を続けさせることになるのであれば、本来の防災まちづくりに反することにもなります。
●防災は「次世代、次々世代ごと」という視点を
さらにここでもう一度立ち止まって考えてみると、私たちはあまりにも自分の、同世代の、同時代の、目前の利便性にとらわれすぎてはいないでしょうか。
三陸沿岸はこれまで、歴史的には”忘れる間もなく”繰り返し大津波被害を受けてきました。南海トラフ巨大地震の発生間隔はやや間延びしますが、ほぼ確実に再来するのでしょう。
であるならば、次世代、次々世代のために、少しでも安全な地域づくりを、いま、しておくことが私たちの責任だろうと思います。
本号では地球温暖化問題も取り上げて、大見出しに「私たちは次世代になにを残すのか」と加えましたが、原発回帰も、防衛費増額も、少子化対策も、男女格差も、人権も、ジェンダー・多様性も、憲法改正も……現世の、いま問題になっている諸課題は要するに「私たちは次世代になにを残すのか」と問いかけています。
防災は「自分ごと」と言いますが、さらに一歩進めて、「防災は次世代、次々世代ごと」という視点も必要だと思っています……そう考える”お年頃(老境?)”になってきたようです。
●トンデモ閑話
朝日新聞:「水中核攻撃」試験を宣伝 北朝鮮「津波で艦船や港破壊」
(2023.03.25.)
北朝鮮の朝鮮中央通信は24日、軍の新たな水中攻撃の試験が21~23日に行われたと報じた。「核無人水中攻撃艇を使った」とされている……核爆発で津波を起こして艦船や港を破壊する目的で……
(M. T. 記)

▼《Bosai Plus》 No. 302/2023年03月15日号より(同P. 1(「もくじ」付き)へリンク)
●「GX」は”原発トランスフォーメーション”?
岸田政権の原発回帰への政策大転換は驚きでした。ロシアのウクライナ侵攻を理由として、エネルギー、国防両面での「熟議なき独断専行」は、岸田氏のイメージを大きく変えるものだったのではないでしょうか。
寺田寅彦(1878年~1935年)は明治中期から昭和初期を生きた物理学者、地震学者、そして随筆家ですが、彼は小編『天災と国防』(1934(昭和9)年)のなかで、「(災害は)突然襲来するのである。それだから国家を脅かす敵としてはこれほど恐ろしい敵はないはずである…(中略)…陸軍海軍のほかにもう一つ科学的国防の常備軍を設け、日常の研究と訓練によって非常時に備えるのが当然でないかと思われる」と書いています。
この一節に、東日本大震災の教訓を踏まえて策定された中央防災会議・防災対策推進検討会議の「最終報告~ゆるぎない日本の再構築を目指して~」(2012年7月31日)の“宣言”が共鳴するかのようです。
その宣言とは――「災害から国民を守り、その営みを守り、さらには国を守る。こうしたことができる社会を構築していかなければならない。このことは、軍事的・人為的な脅威から国や国民を守ることに決してひけをとらない、国家の重大関心事項であるべきであり、政治の究極の責任の1つでもあると認識すべきである」。
原発回帰、国防費拡大――守るべき国とはなにか。守るべき国民とはだれか。
国防については本紙の守備範囲外なのでこれ以上触れません。しかし、防災で言えば、原発回帰は本文で手厳しく(?)指摘したように、安全神話への回帰としか思えません。
●原発処理水の海洋放出の風評被害について
国は原発処理水の海洋放出を予定していますが、当然のことながら、風評被害をおそれる地元の反発は根強いようです。
ちなみに、福島原発事故を受けた諸外国・地域で日本からの輸入規制をしているのは韓国、中国、台湾、香港、マカオの5カ国・地域となっています(外務省、2022年7月現在)。
まずはこうしたわが国の対岸諸国の理解と輸入規制撤廃を図ることが先決のように思えますが、いかがでしょう。
●忙中閑話
食品などの備蓄で「ローリングストック」という用語が一般化していますが、英語のrolling stockだと「鉄道車両」の意味です。英語で循環備蓄を言うのであれば、ストックローリングと単語を逆転させなければいけません。
日本の防災を世界に広めようということであれば、これからでは遅いかもしれませんが、「Stock Rolling」にしませんか?(時すでに遅し?)
(M. T. 記)

▼《Bosai Plus》 No. 301/2023年03月01日号より(同P. 1(「もくじ」付き)へリンク)
●少子高齢化時代の「子ども自助防災」地域防災のテーマとして考えたい
直近のニュースに「2022年の出生数(速報値)が前年比5.1%減の79万9728人で、80万人割れは比較可能な1899年以降で初めて、国の推計より11年早い」というものがありました。
政府は当然、危機感をもってこの事態を受けとめているわけですが、少子高齢化は統計的には何十年も前から予見されていたことで、手厳しく言わせてもらえば、なにをいまさら……といった感があります。
本号では、少子高齢化社会のもとで私たちの目には逆に目立ち始めた子どもたちの防災、子どもたち自身の自助防災の視点を取り上げました。
そのきっかけはTAGというママ向け防災メディア『いつもしも』を運営する会社のプレスリリースでした。
TAGは「ママ向け」を打ち出しているので、パパはどうしたの?という本紙の問いかけは本来筋違いかもしれませんが、独自の子ども向け防災学習コンテンツを展開していて参考になります。
このコンテンツから、改めて、地域防災活動での「子ども自助防災」のヒントを得られることと思います。
●青信号で横断歩道をスタートダッシュする子どもたち
ところで、子どもは交通事故から自分の身を守ることも大切な自助防災だと思いますが、残念ながらわが国の通学路などの歩道環境は、欧米と比べれば劣悪と言わざるを得ず、学校での交通事故対策や、子どもの指導教育も大変だと思います。
そんななかで筆者は、信号・横断歩道のある交差点での子どもたちの行動パターンにある共通の挙動を見出しています。
それは、赤から青信号に変わるのを合図に、ほとんどの子どもが”ダッシュ”する(駆け出す)ことです。これって、危ないですよね。
手を上げて横断歩道を渡りましょう、はいいのですが、そのとき車のほうに視線を送る、車の運転手との「アイ・コンタクト」は指導されているのでしょうか。
かたちだけ手をあげて渡るだけでは意味がありません。
「子ども自助防災」はこのように、青信号でスタートダッシュしないこと、「手をあげる意味・理由」までを具体的に教えることから始まると思っています。
●忙中閑話
筆者も対話型AI「チャットGPT」を試してみました。
「ロシアのウクライナ侵攻をやめさせるためには?」の問いへの答えは――
「ロシアのウクライナ侵攻を止めるためには、国際社会の協調と圧力が必要です。以下は、そのための可能性がある手段です……」と4つの手法を箇条書きで示したあと、「……以上の方法を含め、ロシアのウクライナ侵攻をやめさせるためには、国際社会の強力な取組みと協調が必要です」と、満点の回答でした。
(M. T. 記)

■《Bosai Plus》 No. 300/2023年02月15日号より(同P. 1(「もくじ」付き)へリンク)
●創刊から本号300号(+Extra 2号)
本号は、創刊から通算300号という数の上では区切りの号になります(東日本大震災時に号外=Extra 2号発行)。
これまで1号もお休みすることなく定期発行を継続できましたことは、読者のみなさまのご支援のたまものと感謝申し上げます(いっぽう、編集発行人が”五病息災”でもなんとかやってこれたお蔭と……手前みそながらツレアイに感謝)。
だからといって100号・200号のときも、特大号とかは発行していません。あくまで「ゴールは遠いがしっかり見える」の通過点ということで、粛々と発行継続させていただきます。
これからもご愛読のほどをよろしくお願い申し上げます。
●トルコ・シリア大地震――ひとごとではありません
2023年はわが国では関東大震災から100年の年。私たちが改めて大災害への警戒を呼び起こそうというときに、トルコ・シリア大地震が発生しました。
本号巻頭企画でこれを取り上げましたが、いまなお被害は拡大・進行中で、あまりの大災害の様相を前に、防災メディアとしてその一端の速報にとどまってしまったことを悔います。
今後、本号で積み残した多くの重要課題・テーマを逐次取り上げながら、「関東大震災から100年」とからめつつ、”わがこと=わが国の災害環境と同次元の災害”として、トルコ・シリア大地震をフォローしていきたいと思います。
●「いのちを脅かすものを拒否」――「新しい戦前」への動きに警戒
消費者団体の主婦連合会と日本消費者連盟が2月6日、東京都内で記者会見し、岸田政権が国家安全保障戦略(NSS)など安保関連3文書を閣議決定したことに反対する共同声明を発表したという小さな記事がありました。
「消費者団体の活動は平和な社会が保障されてこそ可能。平和な暮らしを妨げ、いのちを脅かすものを拒否することが消費者運動の基本」と強調したとのこと。
自然災害から命・生活・コミュニティを守ろうという防災活動でもまた、「いのちを脅かすものを拒否することが活動の基本」となるのではないでしょうか。
防災活動にかかわるみなさま、「新しい戦前」への動きにも警戒を怠りなく。
(M. T. 記)

■《Bosai Plus》 No. 299/2023年02月01日号より(同P. 1(「もくじ」付き)へリンク)
●巻頭企画は「TOKYO強靭化プロジェクト」
本号巻頭企画では東京都が2023年度予算案に組み込んだ「TOKYO強靭化プロジェクト」の概要を紹介しました。
「関東大震災から100年」に関連づけて、都ではハード施策を中心に防災に大規模な予算を投じていますが、都民の防災意識の醸成に向けたソフト関連事業も進めるようですので、地域防災においても活性化が期待されます。
小池百合子都知事は国政とのこれまでの”確執”もあり、少子化対策や教育費、環境対策などで国と張り合うような感もあります。いい意味での張り合いであれば、国民・都民としては歓迎です……
●「防衛問題」の最悪想定
いっぽう、国の原発再稼働や防衛力増強への”前のめり”姿勢は、防災メディアとしては気がかりです。
これまでも何度も本紙の見解は述べてきましたが、「だれ1人見逃さない、災害犠牲者ゼロをめざす」防災の理念に立つメディアとして、大規模災害と同様、いったん大事故が起これば”亡国”につながりかねない原発や、”人間の意図的な殺戮とまち・コミュニティの破壊”に通じる戦争・有事事態の惹起には断固反対です。
本号(P. 5)で「ミサイル防爆シェルター」の話題を取り上げましたが、たまたまこの記事を起こす前後、朝日新聞の「声欄」に下記の読者投稿を見つけました。
朝日新聞:(声)ミサイル買うよりシェルターを
(2023年1月11日)
教員(大阪府 67)
日本の軍事費が大幅に増額されようとしている。以前は戦争体験や平和憲法が歯止めとして働いて、専守防衛とかGNP1%とかの話し合いが丁寧に行われていた記憶があるが、ここに来て岸田文雄首相が一気に増額を実行に移そうとしている……
朝日新聞:(声)出でよ、「シェルター」掲げる政党
(2023年1月30日)
無職(東京都 86)
日本の軍事費の大幅な増額案に対して、「ミサイル買うよりシェルターを」(11日)を読み、思わずグッドアイデアと叫んでしまいました。太平洋戦争を生き延びた人間としてあの苦しみを二度と後に続く世代に味わわせたくないと思うから……
そう、86歳の投稿者の方は、「ミサイルを防ぐだけでなく、地震や津波など自然の災害にも役立つシェルター。清潔なトイレやキッチン、救急医療室、娯楽室なども備え……」とも提案しています――そんなシェルターを全国民用につくる――そういう防衛費増強ならばまだ、議論の余地はあると思います。
私たちは、南海トラフ巨大地震や首都直下地震から人命を守ろうと、ハード・ソフト両面で懸命に事前防災の拡充を試みているわけですが、国の防衛計画では国民の安全は「Jアラート」で守れるというのでしょうか。
本紙の趣旨は、国民の命を守ることが第一義であれば、巨額の防衛費の使い道は報復攻撃が想定される”スタンド・オフ防衛能力”よりもまず、国民の命を守る「ミサイル防爆シェルター」整備が先ではないかというものです。
でも、しかし、もし「日本の防衛」が、国民の命を守ることが第一義ではないとしたら……国・政府に”理”があるのかもしれません。
(M. T. 記)

■《Bosai Plus》 No. 298/2023年01月15日号より(同P. 1(「もくじ」付き)へリンク)
●2023年第2号は、第1号(1月1日号)に続いて特別構成
本号は「防災DX」をテーマに5ページ特別企画となっています。前号の「関東大震災から100年」に続いての特別構成で、2023年の年初にあたり、今後の防災を展望する大きな課題として取り上げました。
●新語「DX」の連呼は「ないものねだり」?
ここ数年「DX」という言葉が席巻しています。「デジタルトランスフォーメーション」のことですが、英語のDigital Transformationは「X-formation」と表記されることから、その頭文字を取って「DX」と略されるようになりました。
「Transformation」が「X-formation」と表記される理由は「Trans」という言葉の由来にあり、ラテン語の「trans」が「変える」や「超える」といった意味で「cross」と同義。いっぽう、交差するという意味の「cross」の省略が「X」と表記され、同じ意味の「trans」も「X」で代用されるようになったようです。
わが国で「DX」という用語の本格的デビューは、経済産業省が2018年、日本企業もデジタルトランスフォーメーション(以下、「DX」)を進めるべきであるとして、「DX推進ガイドライン」を公開したことに始まるようです。
経産省はガイドラインのなかで、「DX」を「変化するビジネス環境に対応するためにIT技術を活用して業務改革を行い、競争力を高めるもの」として推奨したことから「DX」への注目度が一挙に高まりました。
しかし、経産省の「DX」化期待は、現状では”ないものねだり”にも見えます。
●日本社会の変革を迫る「DX」からは程遠い?
「DX」はもともと「IT技術の活用で人びとの生活をよりよく変化させる」という考え方で、経営・ビジネス環境、さらには人びとの生活・環境の改革をめざす理念にも通底するとも言われます。
しかし日本企業、日本社会にとって「DX」化のハードルは高いようです。業務・生活・文化・環境の改革を迫る「DX」は日本風土に合わない――例えばはんこ文化や根回し・縦割り・年功序列(高齢者が意思決定者)組織、男性優位の社会システムなどが根強く、いずれも「DX」化の障壁となってくるからです。
あえて言うならば、”ガラパゴス的”社会・風土に縛られる日本では、経産省がめざす「DX」は前途多難、ましてや日本社会の「DX」も――
デジタル庁のマイナカード普及の苦戦に見られるように、いまだ”夜明け前”のように見えます(デジタル庁ホームページはいかにも”暗中模索”的)。
●期待は「防災DX」 防災科研の締めの言葉「防災で最も大切なのは自助力」
いっぽう、「防災DX」には大いに期待が持てます。少なくともその”夢”がよりクリアだから。防災科研の「情報が災害対応現場を牽引する「CPS4D」=防災版サイバー・フィジカル・システム)は、「災害から命を守る」防災というゴールがはっきり見えるだけにわかりやすい。
あとは具体的にその社会実装化の事例(研究成果)の快音・連打を期待です。
本文(文末)で触れていますが、防災科研の志の締めの言葉に、「防災で最も大切なのは自助力」とあります。アナログ人間としては、力強い励ましの言葉でもありました。
(M. T. 記)

■《Bosai Plus》 No. 297/2023年01月01日号より(同P. 1(「もくじ」付き)へリンク)
●新年おめでとうございます
コロナ禍の収束がいまだ見えないなか、2023年の幕開けとなりました。
オミクロン株の動静も先行き不透明で、まだまだ気を許せない日々が続きそうですが、新しい年のみなさまのご健勝とご多幸を心よりお祈り申し上げます。
実はこの口上は、2022年1月1日号の本欄からコピペし、「2023」だけ差し替えたものです(手抜き?)。
オミクロン株は直近では亜系統の増加が懸念されているという変容はあるようですが、コロナ禍も満3年続き、マスク着用に象徴される「ニューノーマル」もすっかり根づきました。
いずれにしても「感染しない・感染させない」のライフスタイルは当面続きそうですので、みなさまくれぐれもご自愛くださいますよう。
●本年は関東大震災から100年 通年でさらに防災への志を高く掲げます
本号でも触れましたが、「災害周年」は一種の災害予知情報であり、かつ災害教訓のリマインダー(備忘通知)でもある。つまりは警告メッセージの定期便のようにも思えます。
災害は忘れたころにやってくるのではなく、「忘れたからやってくる」――「災害周年」を備忘通知として見直したいと思います。
●「戦前ですかねぇ」――防災の立場で “前のめり”に反対!
(本文から一部再掲)『ブラタモリ』のタモリさんが過日、テレビ朝日『徹子の部屋』で、黒柳徹子さんの「2023年はどんな年になると思いますか?」という問いに、「新しい戦前ですかね〜」と応じたそうで、そのやりとりがSNSなどで話題になりました。
黒柳さんは「新しい戦前……」とだけ返したところで、次の場面に切り替わったそうです。
政治的な話題は避けたいのですが、現政権の性急な防衛力(反撃能力)強化の動きや原発回帰の動きは、すなおに「防災」の立場で、反対せざるを得ないと思っています。
万一、撃たれる前に敵基地を撃つ(敵基地攻撃)のも防衛だとすれば、真珠湾攻撃とどう違うのか。撃ったあとの敵の反撃は想定しているのか……戦争突入は必至ではないでしょうか。
原発回帰も、討論会などでの賛成派は、あえてわが国特有の自然災害リスク(地震津波、噴火など)には触れないようにしているとしか思えません。
報道によれば、安保戦略改定でこれからは有事への備えに重点が置かれ、自衛隊の災害派遣への対応力を縮小させるという動きがあるようです。「自衛隊の主たる任務は国土防衛、災害派遣は従たる任務」だから、です。
また、政府がウクライナなど武力侵攻を受ける国に対し、殺傷能力がある防衛装備の無償提供を可能とする法整備を行う方向で検討に入ったとの報道も。
わが国政府はだれを、なんのために、どのように守ろうとしているのか。
まさに、本紙の黒柳さんの問いへは「どういう国をめざすか、わが国の“理念”が問われる年」と応じたいところです。
●忙中閑話
共同通信:報道自由度、日本は71位
https://jp.reuters.com/article/idJP2022050301000515
(2022.06.29.)
国際ジャーナリスト組織「国境なき記者団」(RSF、本部パリ)は2022年の世界各国の報道自由度ランキングを発表した。対象180カ国・地域のうち、日本は昨年から四つ順位を下げて71位……
空間デザインエイト:世界の人口あたりの核シェルター普及率
https://takayakoumuten.co.jp/8877
(2022.10.16.)
世界で多くの核シェルターは地下に設置され、収容人数が数千人規模のもの、一般家庭用の小型のものなど様々……スイス、イスラエルの人口あたりの核シェルター普及率は100%、ノルウェーは98%、アメリカは82%、ロシアは78%、イギリス67%、シンガポール54%、日本は0.02%……
(M. T. 記)
